第162回(2007.10.02)
プロジェクトマネジャーは独りぼっちじゃない って?

◆プロジェクトマネジャは独りぼっちじゃない

日経BP社の谷島編集委員が同社のWebに興味深い記事を書かれている。

プロジェクトマネジャは独りぼっちじゃない

この記事でも、いろいろと過去の経緯を書かれているが、谷島さんといえば、日本の今のプロジェクトマネジメントの状況を作り上げた人の一人であることは間違いない。この記事でも触れられているように、日経コンピュータ2002年4月22日号の特集記事

 「プロジェクトマネジメントが日本を救う」

が日本のプロジェクトマネジメントの方向性に与えた影響は決して小さくないだろう。その谷島さんが書いたこの記事は注目に値する。結論に至るまでの経緯は上の記事をお読みいただくとして、結論は以下のようなものである。


◆できる組織の条件
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いま、プロジェクトマネジメントに必要なのは「できる組織」を作ること。「できる組織」から連想するものは

・風通しがよい
・人が出入りしやすい
・異分野の専門家がすぐ連携できる
・尖った人も地道な人もいられる(人の足をひっぱらない)
・意志決定者と現場の連絡が早くつく

だということだ。
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谷島さん自身、この条件は「もはやPMの話と言うより,優れた企業の条件になってくる。しかも,実質的な権限を持った中堅社員が大部屋に集まって仕事をするという,古き良き日本企業の姿」だといっているが、結局、この話の行き着くところはここだというのは共感できるところである。


◆プロジェクトマネジメントは万能ではない

「プロジェクトマネジメントが日本を救う」という記事だけがそのような印象を作ったわけではないと思うが、いくつかの条件が重なり、プロジェクトマネジメントは「マネジメントとは異質のもの」だと思われるようになってきた節がある。たとえば、「従来のマネジメントではうまく問題もうまくいく強力なソリューション」、「プロジェクトマネジメントだけでいろいろな問題が解決する万能ソリューション」とか、「PMBOK(R)のように体系化、定型化ができるソリューション」などがその最たるものだろう。

ビジネスではプロジェクトという考え方が出てきたのは比較的新しく70年代以降だと考える人が多い。が、それにしても、そんなにすごい手法があれば、そこまで放っておかれるはずはないだろう。


◆生き残るためには、環境マネジメントとの有機的な結合が不可欠

プロジェクトマネジメントも、今までに数々あったのと同様に騒がれては消える欧米流のマネジメントのフレームワークのひとつである。ただし、勘違いしてはならないのは、騒がれて消えるというのはマスコミ的な見方であり、どんな経営手法も一定の足跡は残している。いまや、言葉すら忘れられた手法でも実行して、効果を挙げているのが普通である。プロジェクトマネジメントもこの点は同様だと思うし、むしろ、その効果をあげている範囲は広いと思う。ただし、そんなに強力ではないし、ましてや、それだけで何と
かなる万能ではありえない。

要するに、今までの経営手法と同じく、一手法としてある部分をカバーする手法なのだ。

そのように考えると、谷島さんが指摘されているように、まずはプロジェクトの周囲のマネジメント(プロジェクト環境マネジメント)と有機的に統合し、その範囲やパワーを広げることは急務であるといえる。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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