第24回(2004.11.11) 
チームマネジメント(3)
 

◆チームによる問題解決

 さて、このようなプロセスを中心にして、チームが出来上がっていくわけだが、チームとして活動をすることのイメージを明確にしておこう。ここでは、チームによる問題解決を考えてみたい。

 チームによる問題解決としては、その運営技術としてファシリテーションが注目されるようになってきたが、基本的には、会議を使って行われることが多い。チームとしての問題解決の中でもっとも重要な点は、メンバーの持つすべての視点から問題の分析と解決策の検討を行うことである。問題の解決策は一つではない。範囲の広いオプションがでてくれば出てくるほど、質の高い問題解決が行われていると考えることができる。たとえば、ある商品を開発するプロジェクトがあり、現在の保有技術では市場の求める機能を実現することが難しいという問題が発生したとしよう。

 これに対して、必要な技術を新しく開発するというのも一つの解決方法だし、その機能が必要なくなるような新しい商品の使い方を顧客に提案していくというのも一つの考え方である。重要なことは、このようないくつもの問題解決オプションがあった場合に、多くの場合にはトレードオフがあることだ。技術を開発する場合は商品の発売時期が遅くなる、顧客に提案をしていく場合は競合に別の提案をする機会を与えることになる。このようなトレードオフがある多くのオプションの中から、どれだけよいオプションを選べるかがチーム力だといえる。そのためには、自分の専門をバックにメンバーが自由に発想し、自由に評価し合えることが必要になる。


◆チーム力を高めるミーティングの進め方

 このような状況をミーティングで実現するためには、「発散と収束」のプロセスをミーティングの中に取り入れ、図6のようなプロセスを作っていくことが必要だ。

(1)個人が考えをまとめる

 チーム問題解決の最初は、メンバーの一人一人が、プロジェクトマネージャーや他のメンバーから干渉されずに、問題を分析し、問題解決を行う必要がある。この際に、チームリーダーが行うべきことは、事実を提示し、基本的な事実関係について述べることだ。

 リーダーによっては、この事実の提示をせずに、状況の分析をメンバーに任せることがある。一見、チームであることを最大限に利用した方法に見えるが、これは望ましくない。事実、基本的事実関係が与えられない場合には、チームで共通の認識ができない。したがって、個々の問題解決行動そのものが砂上の楼閣と化し、無意味なものになる。

 さらに、その上で、問題の分析と解決策の立案を指示するのだが、この際に重要なことは期限を明確にすることだ。

(2)すべてのアイディアを出す

 個人の問題解決が終わったら、すべてのアイディアを議論の俎上に乗せる。各メンバーが自分の考えを発表する。この際に重要なことは、発表に対して、意見を挟まないことである。これはアンカーリングのように上位者が意見を挟まないということはもちろんであるが、メンバー間にも利害の対立はあるので、それに基づく反論も控えるべきだ。

 例えば、顧客から申し入れのあった仕様変更の方法についての問題解決をしているとしよう。設計リーダーは顧客の要望を全面的に受け入れる構えだが、開発リーダーは影響があって受けたくないとする。すると、設計リーダーが発表している際に、開発リーダーが反対意見を挟みたくなる。これを防止しなくてはならない。

 また、上に述べたアンカーリングを防ぐためには、若いメンバーから発表させるのが望ましい。

(3)アイディアを再構成する

 ここがチーム問題解決で最も大切なところなのだが、出てきたアイディアをみんなで再構成する。各メンバーから出てきた解決策は完成度が異なることが多い。例えば、仕様変更の例で、Xさんから「機能Aの仕様と見直す」という解決策と、Yさんから「機能Bの仕様を顧客の調達業務の効率化という点から見直す」という2つの解決策を比較・評価することは難しい。完成度が違うのだ。この場合、前者の意見に対しても、「仕様見直しの方向性」を付与する必要がある。そうしてはじめて、2つの意見を比較・評価できる。

 そこで、大切なことは、最初の意見はXさんの意見だからXさんが考えてくださいというのではなく、チーム全員でこの作業をすることだ。チーム問題解決の際にどの意見を選ぶかというのはディベートをやっているわけではない。よりよい解決策を作り上げようとしているのだ。そのためには、すべての意見に対して、チーム全員の力で再構成をするプロセスを経ることが重要なのだ。

(4)議論をする

 その上で、議論をする。議論をする際に重要なことは ・批判的スタンスを持ち、また、他の意見に迎合しない
 ・常に現実性を念頭に置いた議論をする
 ・メンバー全員が発言する
の3点である。これを如何に実行できるかによって、出てくる結論の品質が異なる。

(5)アイディアを合成する

 そのような議論を経て、解決策をくくっていき、さらに議論を深める。例えば、上の例で、機能Aと機能Bの仕様変更の目的が一緒であれば、目的で括り、さらにその目的に対して何をすべきかと考えると、さらに優れた別の解決策が出てくる可能性がある。そのような解決策の探索を目指す。

(6)最終案まとめる

 最終的には結論を出さなくてはならない。このときに、可能性としては3つの可能性があることを頭に入れておく。
 一つ目は、そこまで出てきた解決策を比較検討し、優れたものを選ぶという方法である。この方法がもっとも一般的であるし、ここまでの過程でチームメンバーによりブラシアップされているので、現実的でもある。
 二つ目は、評価に値する案の優れた部分を取り出して一つの案としてまとめるという方法である。この方法は下手に採用するとチーム問題解決よりは一人で問題解決をした方が良かったということになりかねないので、注意深く進める必要がある。
 チームで問題解決のプロセスを経ると、何とかして、そのプロセスで出てきた結論を活かそうと考えるが、評価の中で、今まででてきた解決策ではだめだという選択肢を意識しておく必要がある。これが三番目の可能性である。
 プロジェクトマネージャーには、ここまでの問題解決プロセスをひっくり返す勇気も必要だ。


◆学習の重要性

 チーム力を高めるためにもっとも重要なポイントは統制ではなく、学習である。これまでに述べてきたようなチームが取り組む問題解決は、ほとんどの場合、過去に経験がない、未知数のある問題である。たとえばプロジェクトという概念の定義には、「その組織にとって新規性のある課題が存在している」ことが含まれる。保有していない技術要素が含まれる、当社ではまだ誰も経験していないサービスを提供するといったことだ。

 このような課題に対して、統制をして得られるものは少ない。というより、どのように統制すればよいのかが分からないケースが多い。そこで、上に述べたようなメンバー参加型の問題解決プロセスを実行し、そこで新しい知識を生み出し、それを共有することによって組織として学習することによってチーム力を高めていくという考え方が必要になるだろう。


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