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第16回(2003.08.25)
組織チャネリング |
WBSは多くの人が利用しているが、OBSまで含めて、本当の意味でWBSを利用している人は少ない。せいぜい、計画策定、そして、計画に基づくコントロールのツールとしてしか利用していない。
WBSの本質は「分散」にある。つまり、成果をブレークダウンしていき、ワークパッケージというプロジェクトチームの中のユニット、あるいは個人の目標までブレークダウンする。そして、そこで、アクティビティに落とし込んで計画的にそれを行う。
つまり、WBSでワークパッケージを定義すると、ワークパッケージの独立性は極めて強く、基本的にワークパッケージの間で何らかのコミュニケーションをする必要はないのがワークパッケージである。
少し脱線するが、よくPMBOKはコミュニケーションマネジメントプロセスがプアであるという批判を耳にする。しかし、PMBOKの計画やコントロールが基本的にWBSを前提にしていることを考えると、そんなに大きなコミュニケーションマネジメントプロセスは必要ないと考える方が妥当である。
にも、関わらず、現実のプロジェクトの運営においては、全体の情報交換の会議が頻繁に開かれる。下手をすれば毎週行っている。現実を見ても、不要だとは思えない。なぜなのだろうか?
いろいろな原因が考えられるのだろうが、その中の大きな一つとして、「分散」が不適切さを挙げることができる。成果物のブレークダウンのところで、MECEになっていないのだ。原理的には、WBSがMECEになっていないと、重複作業が発生することになる。複数のワークパッケージで同じ成果物を作り出す作業が含まれるからだ。
もちろん、プロジェクトの中でそんな無駄なことはできない。したがって毎週、プロジェクトミーティングを行い、そこで作業範囲を調整していくのだ。
もう少し踏み込んで、どうしてMECEにできないかということを考えて見よう。MECEにできないケースで多いのは、全体の作業が見えていないケースである。例えば、新製品開発プロジェクトや、あるいは巨大な情報システム開発プロジェクトでは、時として、成果の全体が見えにくくなる。不確実性が大きくて明確に定義できないのだ。
このような場合、フェーズマネジメントを行い、不明確な部分を明確にしながら、進めていくのが一つの考え方であるが、もう一つの考え方として、人を中心にして考え、あいまいな部分は人への割り当てを変えていくことにより、進めていくやり方が考えら得る。このような手法がとられている典型的な例はアジャイルな開発方法論を採用しているソフトウエア開発プロジェクトである。
このような考え方を「組織チャネリング」と呼ぶことがある。プロジェクトの中で発生する作業を、どんどんチャネルに割り当てていくという考え方だ。
スコット・スネアは「会議なんてやめちまえ!」(早川書房)の中で、組織チャネリングのプロセスを10個の循環プロセスに定式化している。それを紹介しておこう。
ステップ1:個々のフィードバックを集める
リーダーがメンバーと一対一で、チームの目標、その達成に役立ちそうな個々のゴールについて話し合う。マイルストーンを想定することになる
ステップ2:目標を設定する
リーダーがステークホルダの意見も聞きながら、最終的に個々のゴールを設定する。個々のゴールは全員には公開せず、リーダーは個々のゴールの達成を管理する方法を考える
ステップ3:手段を決める
チームのゴールを達成するための手段を決定する。利用できる資源を洗い出し、従来の方法の再評価を含めてその資源を有効に利用し、目標の達成を計画するるためのリストを作る
ステップ4:手段を割り振る
机上で手段と課題を組み合わせる。リーダーは計画の概要と、任務の割り当てを他の人に示す。
ステップ5:メンバーに任務を伝える
メンバーに仕事を割り当て、各人の課題を別々に知らせる。メンバーは指示された任務について検討し、どのような追加支援が必要かを発表する
ステップ6:各人の仕事を方向付ける
チーム内のグループや個人がそれぞれの任務について間違いなく行うように指導をする
ステップ7:情報と結果を集める
フィードバックを集めながら、プロジェクトの進捗状況と納期に目を配る
ステップ8:情報と結果を統合する
全体として妥当な成果を得るために、個々の結果をまとめていく。その段階で、目標と結果にギャップがあれば、その課題にもう一度取り組む。また、完成したものに自分の好みを加えることもある
ステップ9:目標を達成するために行動する
求められている結果に対して、すべての任務が順応・同調するように取り計らう
ステップ10:結果を評価し、プロセスを繰り返す
プロジェクトの成果とそれを導いたプロセスを評価する
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