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第20回(2004.03.29)
プロジェクト品質の家 |
◆プロジェクト品質とは
「プロジェクト品質」という概念は、明確に決まったものがあるわけではないが、必ず評価しなくてはならないのは(品質指標)、
(1)プロダクトの品質
(2)プロセスの品質
(3)メンバー個人のパフォーマンス
(4)顧客満足度
の4つだろう。
それぞれの品質の達成の方法(アプローチ)についてもさまざまであるが、プロダクトの品質についてはコンベンショナルな品質保証と品質管理の手法が適用されることが多い。また、プロセスの品質については、最近注目されだしたプロジェクトマネジメントの組織成熟度のような手法を使い、向上を図っていくことが考えられる。さらに、メンバー個人のパフォーマンスについては、ちょうど今、「ヒューマンソフトマネジメント」で解説しているパフォーマンスマネジメントが有力な手段である。
◆顧客満足度へのアプローチ
4つの中で、最もアプローチが難しいのは、やはり、顧客満足度という品質指標である。実際にさまざまなツールが提案されているが、顧客満足の中には、「知覚品質」的な部分が大きく、なかなか、体系的なアプローチの考案が難しいようだ。
一方で、プロジェクト品質マネジメント全体へのアプローチとしては、リスクと同じようにプロアクティブなアプローチが一般的な考え方になりつつある。つまり、プロジェクトマネジメントの早い時期から、プロジェクトの目的に適う品質を達成するために可能な限りの準備をしていくというものだ。このような考え方をした場合、(4)の顧客満足度という品質指標については、立ち上がりの段階で何をできるかが最も重要なことはいうまでもないだろう。
例えば、情報化の例を考えてみると、如何にすばらしいシステムを設計し、如何に完璧なインプリメントをしようと、そのシステムが顧客の目的に適っていなければ、顧客が満足することはないのはいまさら述べるまでもないし、また、顧客の中でしっかりとした目的の設定ができていない限り、如何にベンダーががんばっても顧客自身が満足できることはない。
◆プロジェクト品質の家
このような問題に対して、興味深い手法にジェームス・エバンスが彼の名著「The Managmenet and Control of Quality」の中で提唱している「プロジェクト品質の家(Project House of Quality)」と呼ばれるアプローチがある。これは、顧客がどのような期待をしており、そして、その期待の優先度をプロジェクトの仕様に変換する手法で、ちょうど、家を組み立てるように、6つの要素を組み合わせていくので、この名前がついている。
6つの要素とは、
1)顧客のプロジェクトへの期待/要望
2)プロジェクトの技術的特長や仕様
3)顧客の要望とプロジェクトの仕様の間の関係
4)顧客にとっての重要性
5)他のプロジェクトとの比較
6)仕様の優先度
の6つである。これらの要素をこの順番で分析していくことにより、顧客の要望がプロジェクトの仕様に変換できる。
まず、最初は顧客のプロジェクトへの期待やあるいは要望を分析し、きちんと認識をする。顧客のプロジェクトへの期待とは、顧客のプロジェクトの目的であり、例えば、情報システムを調達する場合であれば、調達により何をしようかということでもある。
次に、その顧客の要望を踏まえて、プロジェクトにどのような技術的特長が発生するかを分析・理解する。例えば、どのような技術を使うのか、その技術はプロジェクトにとってどのようななれないものか、なれたものかなどをきちんと認識する。
次に、双方の間の関係を分析し、プロジェクトのフィージビリティを分析する。この段階で、顧客の要望をすべて実現できればよいのだが、一般には投資金額の制限があるのですべてはできない。そこで、顧客にとっての要望の重要性を分析する。
この段階で、他のプロジェクトとの比較を行う。ベンチマーキングである。
その結果も含んで、顧客の要望の優先順位をプロジェクト仕様の優先順位に落とし込んでいく。
以上のプロセスにより、顧客の満足できるプロジェクトの仕様を決定できる。
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