第19回(2003.11.17) 
コミュニケーションを計画する
 

◆コミュニケーションの対象
 プロジェクトマネジメントにおけるコミュニケーションの対象は明確だ。ステークホルダである。つまり、プロジェクトマネージャー、メンバー、顧客、プロジェクトマネージャーのライン上の上司、ステークホルダすべてがコミュニケーションの対象になる。

 中でも、重要なのが、メンバーと顧客とラインマネージャー(あるいはPMO)であり、これらについてはツールをうまく使っていく必要がある。

 考慮すべきことは、ステークホルダというのは誰なのかという点だ。つまり、お客の担当者といった場合にも一人とは限らない。特に、ステークホルダという捉え方をする場合には、一人ではないことの方が多い。その点をきちんと配慮した上で、計画をしていく必要がある。

◆コミュニケーションの方法
 コミュニケーションの方法の類型化はさまざまなものが考えられるが、フェースツーフェース、メディア、ツールくらいに分類しておくのが適切だろう。

 フェースツーフェースは、インフォーマルコミュニケーションと、フォーマルコミュニケーションに分類できる。前者は、事前交渉や技術打ち合わせなどのような場合に使われる。フォーマルコミュニケーションはほとんど会議である。

 メディアの分類も時代とともに変わってくるので迷うところだが、電話、インスタントメッセージ、電子メール、メーリングリスト(プッシュ)、電子フォーラム(プル)、テレビ会議くらいに分けることができよう。ここで、注意しておきたいのは、プルとプッシュがあることである。

 フェースツーフェース、メディアの2つはインタラクティブなコミュニケーションであるが、情報伝達を目的にしたコミュニケーションもある。これがツールである。

◆ツールによるコミュニケーション
 ツールは大きくは2つに分けて考える必要がある。一つはいわゆるフォーマットである。もう一つは、成果物(あるいは成果物データベース)である。ツールでコミュニケーションされる内容は、進捗、コスト、品質、変更、問題、リスク、調達などの管理である。

 進捗管理の場合、マイルストーン、マスタースケジュール、WBSのガントチャートなどのフォーマットを使うことが多い。

 コストの場合、予算表、サマリー、余実管理表などのフォーマットを使う。

 品質の場合、レビュー実施報告書、テスト実施報告書、余実管理報告書などのフォーマットを使う。

 変更管理の場合、変更管理リスト、変更管理協議書、スコープ変更管理協議書、変更報告書などのフォーマットを使う。

 問題管理の場合には、問題管理リスト、問題報告書などのフォーマットを使う。

◆コミュニケーションツールとしての手法
 ここでももう一つ考えなくてはならないことは、フォーマットには解釈が入らないが、解釈を含めたコミュニケーションの方法もあることだ。分かりにくいかもしれないが、例えば、EVMSは解釈を含めた進捗報告の方法である。スケジュール効率、コスト効率などは一定の理論はあるが、解釈の一つである。こういう例は、プロジェクトマネジメントの中ではある。他の例を挙げると、リスクの定量化などが該当する。

◆コミュニケーションの目的
 コミュニケーションの目的もいろいろな分類が考えられるが、一般的には
 ・報告、連絡(情報を伝える)
 ・交渉、依頼(予め準備してある結論に合意する)
 ・相談、協議、議論(結論を生成する)
 ・説明(情報を説明する)
 ・情報収集(特定の目的に必要な情報を集める)
 ・無目的(駄弁る)
の6つに分けることができる。

◆コミュニケーションのタイミング
 コミュニケーションのタイミングには、定期、イベントドリブン、ランダムの3つがある。

 定期は毎週月曜日とか、毎日何時とか、決まった時間にコミュニケーションを行うことである。例えば、進捗報告などはこの例である。

 イベントドリブンは、情報が発生したタイミング、あるいは、情報ニーズが発生したタイミングでコミュニケーションを行うことである。例えば、トラブル報告がこれに該当する。

 ランダムというタイミングの取り方は無目的なコミュニケーションの場合に多い。

◆コミュニケーションスコープ
 プロジェクトではすべての情報をすべてのステークホルダで共有するわけではない。むしろ、共有する範囲(スコープ)が決まっている情報の方が多い。コミュニケーションの定義の中では、このスコープの設計をしてやらなくてはならない。パターン的には、全員、プロジェクトチーム全体、チーム内関係者、ラインとPM、顧客とPMくらいに分けることができる。各情報について、適用されるコミュニケーションスコープを決定する。

◆コミュニケーションの計画手順
 コミュニケーションの計画は以下の手順で行う。

 ステップ1:必要なコミュニケーションの洗い出しと分析
 ステップ2:コミュニケーションのルールの決定
 ステップ3:コミュニケーションのプロセスの決定
 ステップ4:コミュニケーションのツールの選定、作成
 ステップ5:コミュニケーションオーディットの方法の決定

 まず、最初に必要なコミュニケーションを洗い出す。これは、プロジェクトのフェーズなどをフレームにとって、MECEになるようにすればよい。
 次に、それぞれのコミュニケーションについて、そのルールを明確にする。ルールがどのようなものかは後で述べる。また、同時に、そのコミュニケーションがどのようなタイミングで発生させ、どのようなプロセスで実施するかについても決定する。
 次に、ルールやプロセスを実現するツールの選定、フォーマット類の作成などを行い、実行環境を作る。

 と同時に、そのようなツールの中に、コミュニケーションオーディットの項目を埋め込み、プロジェクトでコミュニケーションが計画通り実行されているかどうかをチェックできるようにしておくとよい。

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