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第18回(2003.10.27)
契約管理 |
◆契約とは何か?
契約とは、
「二者以上の当事者間での権利および義務を生じさせる合意」
と定義される。まず、この定義をはっきりと頭に入れておく必要がある。
◆契約の方式
代表的な契約の方式には、一括請負、実費精算をはじめとして、いくつかの方式がある。複数の契約方式が存在する理由は、発注者と受注者のリスクのバランスの問題である。
(1)一括請負契約
最初に設定した契約金額の範囲で、請負者はコストを利益をまかないながら、指定されたサービスや製品を提供する契約方式。最も一般的契約方式。受注者が一方的にリスクを負うことになる。
(2)実費精算方式
依頼された業務に関わるコストの払い戻しを、予め決めた上で報酬とする契約方式。払い戻しの決め方には、一定の料率を決める定率方式と、金額を決める定額方式の両方がある。また、コストと報酬の最高額を決めておくこともある。発注者が一方的にリスクを負うことになる。
(3)固定価格プラスインセンティブ契約
契約時に契約金額を固定した上で、実コストが予算を下回った場合ボーナスを支払う、上回った場合ペナルティを支払う契約方式。発注者と受注者のリスクバランスを取ることができる。
(4)単価契約
契約総額を決めずに、サービス単価、製品単価のみを決め、発生した作業料、製品数に単価をかけた金額を受領する契約方式。上の3つの方式とは異質である。リスクについても一般的には判断しにくい。
◆契約書にはどのようなものがあるのか?
このような契約方式にのっとり、プロジェクトでは、いくつかの契約が交わされる。どのような契約書が交わされるかはアプリケーションの分野により異なるが、たとえば、SIの場合だと、以下のような契約書を交わすのが一般的だ。
(1)見積書
クライアントのRFPに対して、ベンダーが提案書を提出する。提案書が候補になれば、クライアントより見積もり依頼が出され、ベンダーが見積書を提出する。
(2)システム開発基本契約書
契約が繰り返し行われる場合に共通事項をまとめて行う契約書である
(3)システム個別開発契約書
個々の契約にあたり必要になる契約書である
(4)成果物納品書・成果物受領書
成果物とともにクライアントに提出し、クライアントは内容を確認し、成果物受領書をベンダーに渡す
(5)完了報告書・完了確認書
システム開発サービスの完了時にベンダーがクライアントに完了報告書を提出し、クライアントはサービス完了を確認し、完了確認書をベンダーに渡す
(6)役務範囲記述書
プロジェクトの範囲や実施方法について合意内容を文書にし、契約書に添付する
(7)要求仕様
個々の契約において実施するサービスの内容を詳細に記述した契約書である
◆契約書には何を書くのか
ひとつの例として、役務範囲記述書の内容を見てみる。このように、契約書はあまり簡略化せず、必要事項を網羅することが望ましい。
(1)要求仕様
当該契約で実施するサービスの内容の詳細を記述する
(2)成果物
成果物となる納入品について、名称、納入時期、納入場所を記述する
(3)プロジェクトの組織体制
ベンダー側の体制とそれに伴うクライアント側の体制を記述する
(4)前提と制約条件
プロジェクトの前提と制約条件を記述する。
(5)クライアントとベンダー間の役割分担
アクティビティごとの両者の作業分担を記述する。最低でも、主体、支援、レビューの3つは必要
(6)変更管理
クライアントからの要求仕様変更への対処方法を記述する。変更プロセスと契約変更方法。
(7)受け入れ準備と手順
受け入れに際して、受け入れプロセスと使用する評価基準を記述する
(8)支払い
費用の支払いに関して、金額、時期を記述する。ペナルティについても記述する
(9)ミーティングの開催
進捗報告、仕様変更協議、レビューなどのミーティングの開催について記述する。出来れば、時期、議題まで決めておく
◆複数段階契約
システム開発のように、プロジェクト作業を開始するまでプロジェクト成果物の定義がしにくいケースがあるが、このようなケースには、複数段階契約という考え方が有効である。
システム開発を例にとれば、以下のような形で複数段階契約をすることが多い。
(1)フェーズ1
・開発フェーズ:要件定義〜基本設計
・契約形態:委任契約
・アウトプット:システム仕様書、完了報告書
(2)フェーズ2
・開発フェーズ:詳細設計〜テスト
・契約形態:請負契約
・アウトプット:プログラム、設計ドキュメント、完了報告書
(3)フェーズ3
・開発フェーズ:導入
・契約形態:委任契約
・アウトプット:システム、完了報告書
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