第4回(2002.06.24) 
プロジェクト憲章
 

◆プロジェクト憲章とは

 憲章とは,法則,掟を意味する言葉で,憲法においては典章を意味している.

 プロジェクト憲章は,プロジェクトの基本姿勢と構造を示した,プロジェクトの特徴付けのためのツールである.この目的のため,一般的には,プロジェクトに求められる成果物とその背景になるニーズを中心にプロジェクトの内容を記述したドキュメントを作成してこれをプロジェクト憲章と呼ぶ.
 プロジェクトの前提は,それまで全く知らなかった人たちが集まってきて,同じチームで仕事をすることである.そこではチームのビジョンも風土も一から作ることになる.その際,プロジェクト憲章は最低限,そのプロジェクトチームで共有したい情報という役割を果たすことになる.逆にいえば,プロジェクト憲章はそのような目的で使われるという認識の下で作る必要がある.

◆プロジェクト憲章には何を書くのか

 プロジェクト憲章に記述する内容はだいたい以下のようなものが一般的である.

(1)プロジェクト名
 プロジェクトにおいてプロジェクト名はとても重要である.なぜなら,みんながプロジェクト名をいろいろなところで使うからである.「プロジェクトX」のように,内容を表す良い名前をつけよう.
(2)プロジェクトの背景になるニーズ
 このプロジェクトがなぜ,行われるか.特に,受注プロジェクトである場合,顧客の思いや発注の経緯なども共有しておいた方がよいだろう.
(3)プロジェクトの最終目的
 プロジェクトによって達成したい目標.「顧客満足を上げること」というような書き方ではなく,「リピータの50%増加」というような具体性があった方がよい.
(4)プロジェクトの成果物
 プロジェクトによって生み出される製品,サービスなど.たとえばシステム開発だと単にシステムではなく,100個のモジュールからなる営業管理システムというように明確な目標になるほうがよい.
(5)予算
 プロジェクトで使うことのできる予算
(6)納期
 プロジェクトを実施する期間,あるいは終了日
(7)プロジェクトが完了する条件
 プロジェクトを完了させるには,どのような条件をクリアすればよいか.顧客の検収といった表現ではなく,例えば100ポイントのテストのクリアといった表現がよい.
(8)プロジェクトメンバーと組織
 メンバー名と組織形態(プロジェクト組織,マトリクス組織,機能組織など)
(9)プロジェクト運用のルール
 プロジェクトにおけるプロジェクトマネージャーの権限,メンバー間の情報伝達の方法,など.
(10)プロジェクトによる学習
 このプロジェクトに参加することにより個人はどのようなスキルアップが期待されるか,また,組織にはどのようなスキルが生まれることが期待されるかなど

◆終わりに
 コミットメントを明文化するというのは思わぬ効果を生むものである.プロジェクトマネジメントを導入していないケースでも,ぜひ,プロジェクトを実施する際には作って見るといいだろう.

◆お奨め図書
EVMSの勉強には,
 能沢 徹:図解 国際標準プロジェクトマネジメント―PMBOKとEVMS,日科技連出版社(2000)
がお奨めです.
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