第3回(2002.06.14) 
WBS(Work Breakdown Structure)
 

◆ガントチャート
 プロジェクトに参加した経験のある人であれば,一度は線表というのを目にされたことがあるだろう.ガントチャートともいう.プロジェクトで実施すべき項目とその実施スケジュールをグラフの形で示したものである.ガントチャートを作るには,どのような作業があるかを検討して,それぞれがどれだけの作業量なのかを決め,スケジュールを決めなくてはならない.



図:ガントチャートのサンプル

◆成果物とは
 プロジェクトは成果物を明確にするところから始まる.では,成果物とは何か?成果物とは,プロジェクトで完成した製品だけを指すのではなく,プロジェクトで最終的に納入されたものはすべて成果物となるだろう.たとえば,取扱説明書や保証書,販促資料,そして保守体制などもすべて成果物に含まれると考えて良い.

◆WBSとは
 成果物が明確になる,次に

図:WBSのサンプル

その成果物を創出するにはどうすれば良いかを考える.ここで重要な前提がある.それは,プロジェクトというのは「従来に経験がない仕事をするための仕事である」ということである.これは言い換えるとどうすれば,その成果物を得られるかが分からないということである.どうすればというのは,どういう作業をすればということもあれば,どのくらいの時間作業をすればということもある.
 そこで,できるだけ作業を細分化して考えたい.なぜなら,細分化してしまえば全く経験のないと思っていた作業の一部の作業は経験しているかもしれないし,作業時間の見積もりなども考えやすくなる.
 問題はどういう作業があるかもよく分からない状況で,どのように作業を細分化すればよいのかという問題に行き当たる.適当に行えば,作業を見落としてしまう危険性が大である.そこで出てくる方法がWBS(Work Breakdown Structure)という手法である.
 WBSは名称からうける印象とは違い,作業を洗い出すということはしない.成果物から入るのである.つまり,成果物をどんどんブレークダウンしていく.例えば,会社紹介のWebサイトを作るとしよう.これが成果物である.そのためには,HTMLのページを,プログラム言語で書いたCGIを作らなくてはならない.さらに,HTMLで作るページには,トップページ,会社概要のページ,製品案内のページ,業績紹介のページなどが必要である.この中で例えば,会社概要のページには概要紹介のテキストと,会社のビルの画像が必要である.他のページも同様だろう.もうこれ以上,成果物は細分化できない.そこで,今度は,概要紹介テキストや画像を作る「作業」を考えるのである.概要紹介テキストを作るには,まず,「概要紹介文章を考えて書く」,そして「コンピュータ入力する」という作業が必要である.この最下位の成果物に対する作業はワークパッケージと呼ばれる.図にWBSの一例を示す.

 「会社概要のページを作る」という作業と「概要紹介文章を考えて書く」という作業を較べると,後者の方が具体性があり,なおかつ,工数などの見積もりがしやすいことは明白であろう.
 ここで注意して欲しいことは,「会社概要のページを作る」と「概要紹介文章を考えて書く」とでは,管理のしやすさが違うということである.「会社概要のページを作る」作業とするとどれくらい完了したのかということが分かりにくい.ところが「概要紹介文章を考えて書く」という作業の管理は比較的容易にできる.これが,プロジェクトマネジメントでWBSを作るもう一つの理由である.

◆OBSとは
 さて,WBSでワークパッケージが決まると,もう一つはそれぞれの作業に対する責任者と担当者を決めることができる.すると,自動的に体制が出来上がる.
 これがOBS(Organization Breakdown Structure)である.

◆マイルストーン
 さて,ここでもうひとつWBSと関連の深い概念を紹介しておく.それはマイルストーン管理でという概念である.
 マイルストーンは日本語に訳すると一里塚という意味である.マイルストーン管理(あるいはマイルストーン計画)とは達成したい目標へ向かって,まずステップごとに段階を分け,計画を立てて実施し,その結果の検証をしてこれをもって修正された新たな計画を立て再び実施を行うという方法でプロジェクトを進めていくことである.
 その際,マイルストーンをどこにとるかが問題になる.これはいろいろな考え方があるが,基本的にはマイルストーンを何に使うかということから考えるべきであろう.多くの場合,プロジェクトチーム内での進捗の目安や,チェックなどの目的に使われることが多いが,その場合にはスケジュール上厳守したいスケジュールをマイルストーンに設定する.顧客との共同作業が発生する場合には顧客の作業の節目をマイルストーンのとる場合がある.いずれにしてもスケジュール管理を円滑に進めるためには重要な概念である.

◆WBSとスコープ
 WBSはスコープと密接な関係があるがこれについては,「プロジェクトマネジメント戦略ノート#2 スコープ考」を参考にして戴きたい.

参考文献:
PMI 「A Guide to the Project Management Body of Knowledge
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読者からのコメント
WBSをどこまで詳細にすればいいかを示していただきたく思います。どこにもそのような情報がありませんので。あと、もう少し流れ的に見せていただけると助かります。例えばSTEP1・・・をする。STEP2・・・をする。 けんけん(29歳・ソフトウエアエンジニア)
おいしいところは有料でみたいな感じになって恐縮ですが、ご要望の内容は、有料メルマガプロジェクトマネージャー養成マガジンプロフェッショナルのプロセス2「完璧なWBSを作る」ですでに解説しています。よろしければ、ご購読ください。 好川哲人(PMOS本舗)

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