第1回(2002.05.11) 
PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)
 

◆PMBOKとは何か
 PMBOKはプロジェクトマネジメントのための知識体系である.プロジェクトマネジメントに必要な知識は大きく分けると2つのある.一つはプロジェクトマネジメントの手順である.つまり,どういう流れでマネジメントをしていけばよいかである.もう一つは,手法である.例えば,最適なスケジュールを作るにはどうすればよいか,もっとも安いコストで進めるにはどうすればよいかといった手法である.
 PMBOKはこれらに対して解決のための枠組みを与えている.
 PMBOKが決めていることは2つある.一つはプロジェクトマネジメントの進め方である.もうひとつが,手法であるが,手法は知識領域として整理されている.

◆PMBOKのプロセス
これはプロジェクトマネジメントプロセスと呼ばれるものであるが,5つのプロセスから構成されている.立ち上がり→計画→遂行→終結という基本的なプロセスの流れがあり,これにコントロール(管理)プロセスが絡んでくる.




 まず,プロジェクトを立ち上げて,計画を立てて,実行し,そして,(進捗)管理を行う.計画通り進んでいない場合には,計画を変更する.この流れは変更管理と呼ばれ,PMBOKでは非常に重要な部分である.PMBOKを最初に見たときに奇異に感じるのは,遂行というマネジメントプロセスが入っていることである.このプロセスでは,調達や品質保証,情報管理などが行われるが,プロジェクト作業として行われるべき作業にもマネジメントとみなすべきものがあるという考え方のようである.
 ただし,厳密にいえば,これは一つのプロジェクトのマネジメントの進め方ではないので注意しておいて欲しい.PMBOKでは,プロジェクトライフサイクルをフェーズに区切って考える.小さなプロジェクトだと1プロジェクトは1フェーズであるし,大きなプロジェクトだといくつかのフェーズから構成されることになる.このマネジメントプロセスの流れは,プロジェクトに対するものではなく,フェーズに対するものである.

◆PMBOKの知識領域
 さて,この流れとは別にPMBOKには9つの知識領域なるものがある.スコープ,時間,コスト,品質,組織,コミュニケーション,リスク,調達,統合の9つである.PMBOKではプロジェクトマネジメントで必要な知識をこの9種類に区分することより,知識を体系化している.詳細はPMBOKのガイドを参考にしてもらうとして,例えば,時間という知識領域だと,作業定義や,手順設定などの方法が定められている.興味深い点は,PMBOKはよく手法の集合のように思われているが,そうではなく,単なるフレームワークであるということである.つまり,枠組みを決めておいて,その枠組みに入る手法はいろいろなところから持ってきてくださいということになっている.例えば,PMBOKの手法だと思われているWBSやEVMSにしても,WBSは米国の国防省が開発したものだし,EVMSはANSIの規格である.極論すれば,PMBOKはORや経営学の知見をプロジェクトマネジメントの中のどの場面で使えばよいかを示しているに過ぎない.この点をよく理解しておく必要がある.
 そして,マネジメントプロセスと知識体系の関係は,それぞれのマネジメントプロセスを構成するのに,これらの知識領域に含まれる知識から必要な知識をピックアップしてマネジメントを行っていくという考え方になっている.



参考文献:日本語版PMBOKガイド
PMI A Guide to the Project Management Body of Knowledge, 2000: Official Japanese Translation

最新のPMBOK第3版の日本語版は
こちら
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読者からのコメント
PMBOKという言葉だけを知っていましたが、その内容を詳しく知りませんでした。
体系的にマネジメントできる手法ということですので、関心をもって、勉強してみたいと思います。
kshichiz(62歳・会社員)

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