第1回(2003.11.30) 
ヒューマンソフトマネジメントスキルとは?
 

◆プロジェクトマネジメントの失敗の多くがここにある

 プロジェクトマネジメントの失敗の多くは、ヒューマンソフトマネジメントスキルにあると認識されている。ところが、日本ではあまりこの分野に関心がもたれていない。というか、まったく関心がないわけではないのだが、「人間的要素」だとか「人間的側面」といった言葉で包括的に捉えている。
 間違いではないが、そのように捉えられると、どのように身に着けていけばよいかわからなくなる。極端なことを言えば、「人間的に成長しないと身に付かない」とも言えなくない。これでは、スキルとは捉えにくい。

◆ヒューマンソフトスキルとヒューマンソフト「マネジメント」スキル

 一方で、最近、コミュニケーションスキルやネゴシエーションスキル自体には非常に関心が高まってきている。これらは、人間の振る舞いのスキルである。例えば、コミュニケーションスキルといえば、相手の意見や意思をきちんと理解し、相手に自分の意思や意見をきちんと理解してもらうスキルである。
 これに対して、ヒューマンソフトマネジメントスキルはマネジメントスキルである。つまり、マネージャーとして何らかのマネジメント上の目的を達成するためのスキルである。例えば、「意見を伝えて、相手に改善を求める」、「動機付けをして、パフォーマンスを向上させる」、「責任を明確に意識させ、職務を全うさせる」といったことがマネジメント上の目的になる。
 このように説明すると、ヒューマンソフトスキルとヒューマンソフトマネジメントスキルは似て非なるものであることが分かるだろう。関係付けるとすれば、ヒューマンマネジメントソフトスキルを発揮できるようにするために、ヒューマンソフトスキルを持っていることが必要だと考えてもよい。

◆ヒューマンソフトマネジメントスキルの重要性

 実は、ヒューマンソフトスキルというのは、いわゆる日本的な組織ではあまり重要ではない。日本的組織といっているのは、メンバーに同質性を求め、同じように管理することを前提にした組織である。このような組織では、メンバーの一人ひとりを独立した個人として扱う必然性も薄く、「命令」で「統制」できる。
 ところが、いわゆるプロジェクト組織のように、「異質な人材」が集まり、「自己責任において自律的に行動する」組織では、「命令」だけで統制することは不可能である。一人ひとりのメンバーの価値観を認めた上で、自分の求める方向に向いてコミットして貰う流れを作り上げなくてはならない。これが、プロジェクトマネージャーへの道(14)で触れた、ダイバーシティとリスペクトだ。
 このようなマネジメントを実現しようとすると、ヒューマンソフトマネジメントスキルが必要になってくる。

◆ソフトスキルとソフトマネジメントスキル

 ヒューマンソフトスキルという言葉がある。これは、人間関係、意思疎通、指導、評価などをうまく進めるリーダーシップやコミュニケーションの能力のことである。一般的なマネジメントにおいては、これらの能力そのものがソフトマネジメントスキルだといってもよい。マネジメントのフレームワークと呼べるものが存在しないからだ。
 しかし、プロジェクトマネジメントやエンジニアリングマネジメントにおいては、若干、事情が異なる。これらにはマネジメントフレームワークがある。プロジェクトマネジメントであれば、PMBOKが代表である。
 すると、ソフトマネジメントスキルは、人間関係、意思疎通、指導、評価を進めるだけではなく、マネジメントフレームワークをうまく進めるものでなくてはならない。

◆ヒューマンソフトマネジメントスキルにはどのようなものがあるか

 以上のように定義されるヒューマンソフトマネジメントスキルには、フィードバックスキル(ネガティブ、ポジディブ)、コーチングスキル、リテンションスキル、ジョブディスクリプションスキル、パフォーマンスマネジメントスキルといったスキルがある。
 このシリーズでは、このようなスキルを取り上げ、どのようにしてソフトマネジメントを進めていくかをお話していきたい。
 次回からはフィードバックについてお話する予定である。
◆お奨め図書
 ロッシェル カップソフト・マネジメントスキル―こころをつかむ部下指導法,日本経団連出版(2003)
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