第7回(2003.01.23) 
原点回帰
 
 エンジニアリングの世界に限らず、プロジェクトマネージャーの不足が指摘される。昨今のプロジェクトマネジメントブームも、言ってしまえばこの流れの中での出来事である。
 しかし、冷静に考えてみると、この話というのは、少し、短絡過ぎるのはないだろうか?そもそもの問題は何かといえば

 「プロジェクトがうまく行かない」

という問題なのだ。経営革新のプロジェクトがうまく行かない、ERP導入プロジェクトがうまく行かない、イベントがうまく行かない、システム開発がうまく行かない、道路建設のための用地買収がうまく行かない、などなど。。。

 原点に返って、プロジェクトがうまく行かない場合の処方箋というのを考えてみると、、単純に考えてみても3つある。

 処方箋1:プロジェクト作業のやり方を変える(メソドロジーの変更)
 処方箋2:プロジェクトマネジメントのやり方を変える
 処方箋3:プロジェクト組織の能力を向上させる

 PMI方式のプロジェクトマネジメントでは、、メソドロジーを選んだり、開発したり、あるいは、プロジェクト組織の能力を向上させることは、プロジェクトマネジメントの一環と捉えているので、確かにこれもふくめてうまくできるプロジェクトマネージャーがいないという問題として捉えることはある意味で正しい。

 処方箋1はエンジニアリングのプロジェクトでは、もっともオーソドックスな問題解決の方法であった。普通にやっていたのでは、間に合わないので、工法を変える、ツールを変えるといった方法である。

 処方箋2は、プロジェクトマネジメントの発展のメインストリームである。プロジェクトマネジメント技術のほとんどはこの処方箋として開発されたものである。

 処方箋3は、プロジェクトマネジメントの中では必ずといって良いくらい処方として行っている。しかし、従来、この処方箋が一人歩きした処方として考えられることはなかった。しかし、この処方箋を真剣に考えざるを得ないところまできている。

 従来、計画にはリスクもあったが、余裕もあった。しかし、今の時代は余裕がない。したがって、計画そのもののできより、「計画通りに如何に実施できるか」が重要課題となってきている。「そんなことは、当たり前だ。EVMSは何のためにあるんだ?」などといった声が聞こえて来そうだ。ごもっともである。しかし、今一度冷静に考えてみてほしい。EVMSは、「人が計画通りには動かない(動けない)」ことを前提にしている。

 ただしである。人が計画通りに動かない(動けない)のにはいくつもの理由がある。

 (1)計画が不適切であった
 (2)作業条件の変動など、思わぬことが起こった
 (3)人が思ったほど、パフォーマンスがよくなかった

などなど。
 従来のプロジェクトマネジメントは、(1)と(3)をすべて計画の問題として片付けている。確かに計画の問題ではある。しかし、解決策は明らかに違う。(1)の理由は、プロジェクトマネジメントの組織成熟度が上がれば、適切に計画ができるようになり、解消される問題だ。しかし、(3)は解消されない。そこで、PMコンピテンシーという話になるのだが、これはプロジェクトマネージャーの問題ではない。メンバーの問題である。いくらプロジェクトマネージャーの能力が向上しても、メンバーの能力がいまのままであれば、限界がある。その意味で、(3)の問題はまだ、まったく、見通しがついていない。
 アプローチはいくつもあるのだろうが、ここでは敢えて2つに限定したい。一つは、パフォーマンスが発揮できるチームの運営である。もう一つが、プロジェクトという仕事の仕方に適した人の行動である。

 この2つの問題は、いずれも、プロジェクトマネージャーに焦点が当たらない「プロジェクトマネジメント」の問題である。

 そして、この2つの問題が、エンタープライズプロジェクトマネジメント(プロジェクト型経営)の導入に当たってはもっとも重要な問題だと認識している。

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