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第24回(2004.06.10)
コンテクストをマネジメントする |
◆あなたならどう伝えますか?
まず、最初にこんなことを考えてみてほしい。
あなたはプロジェクトマネージャーである。あるとき、プロジェクトのメンバーが、「この仕様では、顧客の要求するレスポンスタイムは実現できない」という問題点を上げてきた。あなたなら、これをどのように顧客に伝えるだろうか?
ネゴシエーション、コミュニケーションといった言葉が脳裏に浮かんできたとすれば、少し要注意である。どう切り出せば、顧客を納得させることができるか?、どのように表現すれば顧客に状況を理解してもらえるか?といったことに思いが行っていると思われるからだ。
コミュニケーションにしろ、ネゴシエーションにしろ、それ以前の問題として、「文脈」(コンテクスト)の整理をしなくてはうまくいかない。プロジェクトマネジメントは、コンテクストのマネジメントだと言ってもよいだろう。著者はよく、プロジェクトマネジメントは問題解決行動であるというが、問題解決行動もコンテクストのマネジメントのためには不可欠な行動である。
◆コンテクストをマネジメントするとは
コンテクストをマネジメントするとはどういうことなのか?一言でいえば、さまざまな事象のコンテクストを分析し、それを目的達成に結びつくように調整していくことである。たとえば、上での例を考えてみよう。上の例には、少なくとも2つのコンテクストがある。ひとつは、メンバーがレスポンスタイムを実現できないと考えたコンテクストである。これを単に技術的な問題だと考えるのは早計だ。まず、顧客の要求への「認識」があり、その認識の実現方法を決める意思決定(「判断」)があり、その意思決定に基づく設計(「判断」)があり、そして、現在のままではだめだという「認識」がある。これらがひとつのコンテクストを織り成している。そして、認識や判断にはまた、そこにいたるコンテクストがある。これがひとつの大きなコンテクストになっている。
一方で、顧客の方にもコンテクストがある。要求仕様にいたるまでの一連のコンテクストである。上の例では具体性に欠けるが、たとえば、ユーザからの要求であれば、そのユーザが要求するにいたったコンテクストがある。ユーザの顧客からの要求などだ。
このように背後に膨大なコンテクストがあり、たまたま、そのコンテクストの終結点がうまくつながらない。これがトラブルだ。
◆高みから見る感覚が重要
コンテクストマネジメントとして行わなくてはならないことは2つある。ひとつは、コンテクストの翻訳である。上の例だと、顧客の要求仕様がどういうことなのかを、メンバーのコンテクストとして展開しなくてはならない。たとえば、そのパフォーマンスが必要なのは1日に20万人のアクセスがあるからで、アクセスする人たちがストレスを感じないようにするためだとしよう。すると、ここで、新しいコンテクストの結節点が見えてくる。つまり、アクセスする人たちがストレスを感じなければよいというコンテクストである。すると、メンバーはこれをさまざまな形で仕様というコンテクストに展開できる。
もうひとつはコンテクストの調整である。上の例で、コンテクストの翻訳をしてみたが、どちらのコンテクストにも適切な結節点が見つからないとしよう。すると、今後は調整せざるを得ない。どちからのコンテクストを変える、あるいは両方を変える。たとえば、メンバーの方のコンテクストを変えるのであれば、もっともわかりやすいのはプラットホームの決定に至るコンテクストを変えることだ。もちろん、顧客の方にもそのようなポイントがあるだろう。たとえば、ビジネスを修正し、10万アクセスで、20万アクセスと同等な効果があるコンテクストを作る。
このように常にコンテクストをマネジメントするという感覚を持っていれば、少なくともプロジェクトの状況を一つ高みから見て、冷静な判断ができるだろう。
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