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第23回(2004.06.04)
マネジメント論を学ぼう |
今回はちょっと小難しい話をする。
◆オペレーションリサーチって?
プロジェクトマネジメントの基本となっている手法には、オペレーションズリサーチ(OR)という学問領域で考案されたものが多い。ORとは、何か新しいことをしなければならない時、あるいは現在実行している事柄を改善しようとする時、よりうまい計画を立てたり、立てた計画が円滑に実施されるようなうまい管理を行うことを目的とする。
その場合、いろいろな案を並べみて、それらの案を評価して一番よさそうな案を選択する。しかし、網羅的に並べることは難しいので、全部並べなくても、ある案がもっとも優れていると評価できる理論的な方法を与えてやろうとする学問である。
◆プロジェクトマネジメント手法の本質
プロジェクトマネジメントの手法は、単純にいえば、プロジェクト活動のモデルを作り、不確実性のある環境下で、そのモデルを最適化するにはどうすればよいかを構造も含めたレベルで考えるという手法である。つまり、モデルを作ることにより、すべての案を評価しなくても、すべての中で最適なものを選ぶことを可能にする。
このような手法が有効に機能するには条件がある。言うまでもなく、適切なモデルが作れることだ。モデルが作れない限り、そのモデルを使って評価をしてもそれは全体の中の最適にはならない。モデルで表現できている範囲の最適に過ぎないのだ。
ただし、ここでいうモデルとは、確定的なモデルではなく、確率的なモデルであることに注意を要する。モデルというと、そのモデルを使って現象を再現できるものを想像するだろう。しかし、確率的モデルの場合には、現象そのものは再現するかもしれないし、しないかもしれない。確率的に考えれば再現性があるということだ。たとえば、作業の遅れもマクロにみれば、再現性がある。30日の作業で、ある人が1日目に遅れる確率、2日目に遅れる確率とずっと30日並べていくと、だいたい、どんな人でも同じような傾向があることはわかっている。このような確率事象の時間的な変遷を確率過程という。確率的な動きを動的モデルにしたものである。品質が確率過程に従うことは有名であるし、コストオーバーも確率過程に従うケースが多い。
ちなみに、サ・ゴールで有名になったクリティカルチェーンプロジェクトマネジメントも確率過程を前提に理論が作られている。
◆オペレーションだから確率過程に従う
このような条件があることをよしとしたのは、対象がオペレーションだからだ。オペレーションである限り、基本的な進め方は決まっており、そこにさまざまな不確定要素が存在するだけだと考えることができる。たとえば、上の例でいけば、オペレーションとして毎日何をやるかが決まっているからこそ、その誤差が確率過程に従うのだ。
重要なことはこのような考え方の場合には、当初決めたとおりにやれば確実に成果を得ることができることだ。もちろん、それが難しいので、エンジニアリングのプロジェクトマネジメントで苦労しているのだが、、、
ところが、最近のプロジェクトはオペレーションの存在しないものが多くなってきている。たとえば製品開発のプロジェクト。如何に遅い時期まで顧客や市場のニーズを実現させるかが競争になってきている。そうすると、決まったオペレーションで最初から進めるということは難しい。すると、オペレーションそのものを試行錯誤しながら、プロジェクトを進めていく必要がある。
このような場合には、コストの運用、業務(作業)の運用、組織の運用、など運用が求められるようになってくる。つまり、マネジメントである。マネジメントの場合、最初から決めた基準に従って判断をしていくのではなく、目的を達成するために基準そのものを作りながら判断をしていく必要がある。
このためには、OR的な手法ではなく、組織マネジメント、ファイナンシャルマネジメント、コストマネジメント、ヒューマンリソースマネジメント、マーケティングマネジメント、組織行動論など、経営学で確立されてきた知識が必要になってくる。
◆マネジメント論を学ぼう
PMBOKを見ればわかるとおり、プロジェクトマネジメントの知識体系の中で、経営学(マネジメント論)の知識体系に依存するところは驚くくらい多い。あるいは、上に述べたように、驚くには値しないような時代になってきているのかもしれない。いずれにしても、経営学の知識を持ち、それを活動していかない限り、プロジェクトの成功はおぼつかないようになってきている。
著者がこれをもっとも強く感じるのはコストマネジメントである。コストマネジメントをを経営学(管理会計)の知識だというのもどうかと思わないでもないが、予算管理はできても、原価管理というのが視点すら持たないプロジェクトマネージャーがどれだけいるか?プロジェクトマネジメントの目的を取り違えている。
もっと真剣にマネジメントの知識を身に付けたいものである。
ということで、pmstyle.comでは、「プロジェクトマネージャーのためのマネジメント論入門」(仮題)という連載を始めることにした。MBAである著者が企業のマネジメントではなく、プロジェクトマネジメントを強く意識してマネジメント論の解説をする。世間では、MOTのブームであるが、
MOT+PM+MBA
のような視点でマネジメント論を解説していく。
マネジメント理論のメルマガは結構あるが、遜色のないものを提供していく予定だ。興味のある方は、ぜひ、登録して勉強してほしい。
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