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第17回(2004.04.22)
直線的モデルと有機的モデル |
◆K氏の話
リーダーのイメージとしては、人をぐいぐい引っ張っていくようなイメージが強いが、この1〜2年は、むしろプロセスをリードしていくのがリーダーであるという見方が広まってきている。背景には、ご存知のとおり、コーチングブームから始まった一連のヒューマンスキルブームがあるのは言うまでもない。
先日、ITSSのオピニオンリーダーの一人K氏から面白い話を聞いた。社内にITSSを導入した。そして、ITSSをメジャーにしてスキルの定点計測を始めた。彼の会社は
メンバー → プロジェクトリーダー → プロジェクトマネージャー
というよくあるキャリアパスを設定している。スキル計測により
メンバーとリーダーの違い:開発力、技術力
リーダーとマネージャーの違い:ネゴシエーション力、ビジネスプラニング力
ということがくっきりと出てきたそうである。納得される方も多いと思うが、非常に興味深い話である。
◆直線的モデルと有機的モデル
ソフトウエアエンジニアリングでは稀代のコンサルタントであるジェラルド・ワインバーグによると、技術リーダーシップには2種類あるそうだ。ワインバーグの言葉だと直線的モデル有機的モデルである。直線的モデルはゴールを明確にすると同時に道も決めて、その道でどんどん引っ張っていくタイプのリーダーシップである。組織論では強制的リーダーシップと呼ばれるものだ。これに対して、有機的モデルは、各人が納得するように問題解決に導くリーダーシップである。リーダーシップ論では、問題解決型リーダーシップと呼ばれるものだ。ワインバーグ自身が指摘しているように、一人の人間のリーダーシップタイプがどちらか一方だけということはありえない。双方のリーダーシップをうまく使い分けて初めて、リーダーシップが発揮できることは間違いない。
そこで、K氏の話に戻るのだが、K氏の会社ではメンバーからリーダーになっていく過程では、作業の中に入り込み、作業ベースでリーダーシップを発揮することが求められる。技術的な仕事はマネジメントと較べると正解があるケースが多い。設計のように自由度の高い作業においても、やはり、定石はある。すると、その定石を知っていて、部下をメンバー「指導」できることが必要である。つまり、直線的モデルが求められる。
ところが、リーダーからマネージャーへ昇格するには、いわゆるマネジメントスキルが求められる。その中核になるのが、問題解決力なのだ。
◆有機的モデルを直線的にするな
と、ここまで読んで、古くからこのメルマガを読んでいらっしゃる方は、「なんだ、今までと言うことが違うじゃないか」と思われた方も多いだろう。実は、このコラムで言いたかったのはこのことではない。マネージャーになったら問題解決力というのは一種の直線的モデルだということを認識しておく必要があるということだ。
話が横道に逸れるが、中小企業庁という省庁がある。中小企業の行政を行う省庁だ。中小企業の施策は5年ほど前から大きく変わった。従来「指導」であったのが、「支援」になったのだ。背景にどのような事情があるかは詳しく述べないが、そこで少なくとも現場では混乱が起こった。自立できていない企業に「支援」を如何にするのか?そこで、行われたことは、「支援」のパターン化である。考えてみれば、すぐにわかるが、パターン化された「支援」というのは「指導」に過ぎない。多様性(ダイバーシティ)があることを無視しているのだ。
K氏の会社というより、これは日本系のSI企業ではもっとも一般的なキャリアパスだが、要するにダイバーシティを殺ぐ方向に向かっている。企業というより、制度の問題だろうが、
目的や目標を共有し、自分のやり方(プロセス)でやる。
こそが組織としてのプロジェクトマネジメント成功の法則だろう。ただし、自分のやり方といっても、組織の中で活動している限り、最低限クリアしなくてはならないことがある。それをうまくまとめているのがPMBOKである。
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