第16回(2004.04.01) 
スキルとコンピテンシー
 

◆スキルとコンピテンシーの違い
 プロジェクトマネジメントをめぐっては、ITSSはスキル、PMIのPMCDと少なくとも表面的に異なるものが注目され、どう違うのかという質問を受けることが多い。この点を含めて、常々、スキルアップについて思っていることを述べてみたい。

 まず、一般的にスキルとコンピテンシーはどのように違うのか?スキルは特定のタスク(ジョブ)に対する有能性概念である。従って、スキルがあるとは、特定のタスクができることを意味している。例えば、データベース設計のスキルというと、実際にデータベース設計というタスクができることを意味する。
 これに対して、コンピテンシーはもっと抽象化された概念であるし、タスクベースでもない。つまり、コンピテンシーがあるというのは、何からの理由により、それができると推測されることを意味している。極論すると、スキルがあるという場合はあるタスクが確実にできるが、コンピテンシーがあるといってもできるかどうかわからないのだ。
 まずは、これを頭に入れておいて欲しい。

◆うまくできる
 次にプロジェクトマネジメントに目を移してみる。
 こういう例を考えてみよう。プロジェクトの計画プロセスにおいて、

 (矛盾のない)スケジュールをつくることができる

という場合、これは明らかにスキルについて言及している。ところが、同じスケジュールを作る場合でも

 実行しやすいスケジュールを作ることができる

となるとスキルにプラスアルファが入っていることはお分かりになるだろう。つまり、この場合には、

  スケジュールを作る ; スキル
  実行しやすくする ; コンピテンシー

となっているのだ。ここでコンピテンシーが効いてくる。つまり、このケースだと、バランス感覚だとか、顧客志向性、戦略指向性、リスク感覚といったコンピテンシーがあって始めて実現される。

 ここから先がややこしいのだが、これを全体としてみた場合、つまり、

 実行しやすいスケジュールを作ることができる

というのはスキルに見えるのだ。これはなぜかというと、タスク自体は計画を作ることであり、そこで作った計画は論理的な整合性があること(つまり、計画と呼べるシロモノであること)以外は考慮されることがないからだ。集合の包含関係を考えてみればもっとよく分かる。実行しやすいスケジュールを作ることは、スケジュールを作ることに包含されている。

◆ITSSのスキルとコンピテンシー

 さて、ここで、ITSSに目を向けてみよう。

 職種=プロジェクトマネジメント、専門分野=システムインテグレーション
 スキル項目=タイムマネジメント、

のスキル熟達度の表記は以下の通りである。

<レベル7>
ピーク時の要員数500人以上、または年間契約金額10億円以上規模のプロジェクト責任者として、作業定義、順序設定、所要時間見積もり、スケジュール作成、管理全般を実施し、プロジェクトを成功裡に遂行することができる

<レベル6>
ピーク時の要員数50人以上500人未満、または年間契約金額5億円以上規模のプロジェクト責任者として、作業定義、順序設定、所要時間見積もり、スケジュール作成、管理全般を実施し、プロジェクトを成功裡に遂行することができる

 スキル熟達度をすべて対象に議論するとややこしいので、サイズ要件だけを取り出してみる。すると、レベル7では要員は500人以上だが、レベル6では50〜500人。予算については、レベル7では10億以上だが、レベル6では5億円以上となっている。

 このことと、上で述べた「実行しやすい」スケジュールを作ることの間にはどのような関係があるのだろうか?ITSSでも、PMCDでもこの点がほとんど議論されていないが、本メルマガでは独断と偏見で分析してみたい。

 次回は、この関係を考えて、プロジェクトマネージャーとして何を身につければよいかということを考えてみたい。

 その前に、みなさんはこの2つの間にどのような関係があるとお考えだろうか?意見を募集します。

スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.