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第11回(2003.09.22)
得意技 |
プロジェクトマネージャーに「得意技」が必要な意味
今の「プロジェクトマネジメント」ブームを見ていて感じることがあるのだが、プロジェクトマネジメントには正しい方法がある、あるいは、正しい意思決定があると多くの人が考えているのではないだろうか?
プロジェクトマネジメントブームの前には、MBAブームがあった(今でもそうか?)。MBAブームの中では盛んにケースメソッドが行われ、「経営に正解はないから」という言葉をみんなが発するようになった。これも同じだと思うが、どれだけの人が、その意味を正しく認識して発言しているのか?
「MBAの場合は戦略」、「プロジェクトマネジメントの場合は目的」、これには「結果的という言葉はついて回るが「正解はある」し、あると考えるべきだ。これらを山の頂上だと考えると、そこに至る道はいくらでもある。これが「正解はひとつではない」という意味だ。
ところが、そういいながらも、正解を求める。「例えば・・・」っていう話だ。ところが、そのような手合いに限って、というのが{戦略、環境、実行}のセットであることを理解できていない。
プロジェクトマネジメントでも同じだ。{目的、制約、実行}のセットで初めて答えになる。ここまではそんなに異論がある人はいないと思う。問題はここからだ。
環境の認識というのは企業によって違う。同じ事業を行っている企業でも、その企業能力が違えば、当然環境に対する認識は異なる。例えば、今、大変な不況だが、技術力があるがゆえに、不況が追い風になっている企業は結構ある。不況であっても必要なものは必要であり、ゆえに、よいものを求めるのが生産財、消費財を問わず、ユーザの行動心理だからだ。
これとまったく同じように、プロジェクトでも制約というのはそのプロジェクトの組織能力によって異なるのだ。そして、プロジェクトの組織能力の中で重要なもののひとつはプロジェクトマネージャーの能力である。
こんな例を考えてみよう。あるシステムの開発において、途中で顧客がとんでもないスコープ増加(仕様追加)を要求してきたとする。例えば、今までバッチ処理で行ってきたものをリアルタイム処理してほしいといってきたとする。当然、コストとデッドラインに大幅な影響が出る。
このような問題に対して、考えられる解決策はいくつかある。
(1)顧客を説得して、要求を取り下げさせる
(2)計画を見直し、当初のコストと納期でやり遂げてしまう
(3)メンバーを動機付け、パフォーマンスを上げてやり遂げてしまう
(4)仕様レベルまで戻り、顧客の要求を満たす代替案で顧客を納得させる
などだ。もちろん、どの選択肢も顧客が満足する中で行わなければならないことはいうまでもない。
では、この中のどの解決策を選べばいいのか?これはプロジェクトマネージャーやプロジェクトチームの能力に依存する。例えば、プロジェクトマネージャーが上流工程の問題解決能力を得意としているのであれば(4)がよいだろう。スケジューリングのスキルに通じていれば(2)がよい。いわゆるリーダーシップが強力であれば(3)もありうる。ネゴシエーション力に富んでいれば(1)といった具合だ。
重要なことはどの選択をするかではなく、さまざまな道があることを認識した上で、自分の得意パターンを持つことだ。もちろん、オールマイティであればそれに越したことはないが、なかなかそうなれるものではない。ここに自分のあるべきプロジェクトマネージャー像の重要性がある。
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