第1回(2004.05.07)
 概論(前)
 

 今、一定の規模の企業ではプロジェクトマネジメントオフィス(以下、PMO)は珍しくなくなってきた。進んでいる企業、遅れをとっている企業はあるものの、プロジェクトマネジメントブームの「派生物」として、社内のプロジェクトマネジメントの推進部門としてPMOに該当する組織を多くの企業が立ち上げた。

 では、そのような企業は何をしているのだろうか?著者がいろいろな人から聞いた話を総合するとどうも3つの機能があるようだ。

(1)ピンチのプロジェクトの支援、介入
(2)社内のプロジェクトマネージャーの育成
(3)複数のプロジェクトの間の資源の調整

の3つである。

 そもそも、PMOというのは何をする組織なのか?今は、PMOという言い方の方が普通だが、以前はプロジェクトオフィスという言い方の方が一般的だった。この言い方の方が分かりやすい。日本流にいえば、事務局だ。

 SI企業の方は不思議に思われるかもしれないが、「プロジェクト」というのはもともと事務局が付くくらい組織的に重要で、かつ、珍しい存在だったのだ。この時代にはもっぱら、事務局は事務をやっていた。事務局という存在にあまりなじみのない人もいるかもしれないが、事務局というのは事務をつかさどる雑用係ではないので注意しておいてほしい。むしろ、そのプロジェクトのリーダーと一緒にプロジェクトを仕切る存在だと考えておいた方がよい。著者はこのタイプのPMOを事務局型PMOと呼んでいる。
 予算の確保から始まり、要員の確保、ミーティングの段取り、実質的なプロジェクト進行の段取り(つまり、計画)について、リーダーに意思決定のお膳立てをするのが基本的な役割だと考えてよい。もちろん、このようなマネジメントだけではなく、予算の管理、工数の管理などの事務作業もしなくてはならない。極論すれば、なければプロジェクトが動かないといってもよい存在なのだ。

 そのように重要な役割を果たすプロジェクトオフィスだが、このようなミッションが存在できるのは、プロジェクトが少ないからだ。SI企業のように直接業務のほとんどがプロジェクトで実施されると、とてもではないが、このような組織は作れない。それは、各プロジェクトでやってくれという話になる。PMBOKに代表されるいわゆる近代的なプロジェクトマネジメントは事務局機能をプロジェクトで持つことを前提にして考えられている。

 ところが逆にほとんどの仕事がプロジェクトになると、組織内で標準的なプロジェクトマネジメントのやり方をしようという考えが出てくるのは自然な流れである。そこで出てきたのがPMBOKに代表される業界標準であるが、業界標準を採用しないまでも多くの企業は自社標準を作ろうとした。つまり、プロセスとツールの標準化に取り組んだ。

 ここで、プロジェクトオフィスの新しい役割が生まれてきた。標準化と普及活動という組織としてプロジェクトマネジメントに取り組むための支援活動である。この辺からプロジェクトオフィスではなく、プロジェクトマネジメントオフィスと呼ばれるようになってきた。従来のプロジェクトをつかさどるオフィスから、組織のプロジェクトマネジメントをつかさどるオフィスへトランジションしたのだ。著者はこのタイプのPMOを問題解決型PMOと呼んでいる。

 なぜ、標準型ではなく、問題解決型なのか?理由は2つある。一つは、標準の導入というのは組織とての問題解決に他ならない。この部分が忘れられた標準化は例外なく失敗する。これが一つ。
 もう一つは、標準の導入を行うということは、自分たちの問題(課題)と標準的なやり方のギャップを埋めることである。これは、問題解決活動に他ならない。もっと平たくいえば、標準的なやり方をしていてうまくいかないと、標準の推進部門になきつくというのは世の常である。つまり、問題解決の支援を行わなくてはならない。また、その支援は、標準へのフィードバックをし、標準の問題点を解消する活動にもなる。
 これだけでは納得しない人も多いと思うので、、三つ目に現実的な意味を挙げておく。標準を推進しようがすまいが、そのような組織を作ると駆け込み寺になっている。IT業界には「火消し」だの「め組」だのといった言葉があるが、いやおうなしにこのような役割を負わされる。実際にはこれがピンとくるだろう。

 現在、多くの企業のPMOは、問題解決型のPMOである。「これがよいかどうか」は、単純に判断できる話ではないので、このシリーズでいろいろな視点から検討して行きたいと思っているが、「これだけでよいかどうか」というと明らかに不十分である。

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