第8回(2004.10.14) 
チームをまとめ、目標と情報の共有をするように行動する
 

◆プロジェクトチームへのニーズ

 プロジェクトマネジメントへのニーズの源泉となるプロジェクトの性格にはさまざまなものがある。マネジメントの方針を決めるためには、何からの分類が必要であるが、著者がもっとも現実的だと思える分類はいろいろな意味での不確実性に注目した分類である。不確実性の大きいプロジェクトと不確実性の小さいプロジェクトという視点で、マネジメントに求められるものは大きく変わってくる。

 その一つがチームマネジメントである。プロジェクトとして行わなくてはならないことが明確なプロジェクトでは、チームマネジメントとしては計画に基づくメンバーの担当が明確であり、その担当をきちんと果たすことが求められる。したがって、チームマネジメントとしては「管理・統制」という意味合いが大きくなる。

 逆に、不確実性が大きく、プロジェクトとして行わなくてはならないことが不明確なプロジェクトでは、計画も流動的になり、担当を固定的にすることは難しい。それゆえに、各メンバーが自立的に行動をすることが求められる。

 ただし、後者の場合、多くの「勘違いしたプロジェクトチーム」がやっているようなマネジメントレスということではない。むしろ、マネジメントという意味では、前者以上に強力なマネジメントが必要である。

 そして、マネジメントの中心的手法は統制ではなく、リーダーシップになる。つまり、「チームをまとめ、目標と情報の共有をするように行動する」ようなプロジェクトマネージャーとしての行動が必要になる。


◆メンバーに影響を与える方法

 リーダーシップはスキルやコンピテンシーといったいろいろな捉え方があるが、基本的には

 他者に影響を与えるプロセス

である。チームをリーダーシップでマネジメントしていくとは、メンバーに影響を与えることにより、メンバーを動かし、チームとしての行動をしていくことに他ならない。

 影響を与える手段は5つある。一つは権限を背景にして影響を与える方法である。これは命令することではない。たとえば、プロジェクトマネージャーが事業本部長(ライン)で、評価してもらうために一生懸命、がんばるといったケースがこれに該当する。

 二つ目は、個人的な影響を与える方法である。メンバーに対して自分の考え方を明確に示し、あの人のいうことを信じてみようと思うかと、あの人の力になりたいといった共感を呼ぶ方法である。

 三つ目はメンバーのいうことに耳を傾け、常に、メンバーに問いかけ、やり取りの中で気づきを与え、メンバーに自己決定させる中で、巧みに自分の考えを織り込んでいくという方法である。マネジメントの中でのコーチングというのは基本的にはこの方法による。また、この方法を個人ではなく、チームに対して適用するのが最近注目されているファシリテーションである。

 四つ目はチームに自分の色をつけ、そのチームに参加し、プロジェクト作業をしているうちにだんだんとメンバーがその考え方に染めていくようなやり方だ。プロジェクトそのものは単発(有期)であっても、現実には、一定の期間はリーダー格の人をプロジェクトマネージャーとして同じチームで動くことが多いので、このような方法でリーダーシップを発揮しているプロジェクトマネージャーも意外と多い。

 最後は、ちょっと変わったやり方で、自分はリーダーとしてあまり目立つような行動は取らず、チーム全体がうまくいくような役割や行動を局面ごとにとって行き、結果としてチームの目標を達成するという方法がある。チームのために何かをしてあげたいという気持ちがリーダーシップ行動を生み出しているのだが、いわゆる滅私奉公ではない。自身はリーダーとしての明確なビジョンを持っており、そのビジョンを達成するために行動をしている。


◆この行動特性のためのコンピテンシーう

 いずれの方法をとるにせよ、「チームをまとめ、目標と情報の共有をするように行動する」ためには

 リーダーシップ:メンバーを効果的にともに働くように導いたり,動機付けを行う

というコンピテンシーが不可欠である。

 プロジェクトマネジメントの発展の中で、プロジェクトの難しさは、「複雑さ」から、「不確実さ」に移ってきている。たとえば、IT系でいえば、インターネット以前の時代には、情報システムとして如何にパフォーマンスがよく、利用しやすいものを作れるかがプロジェクトマネジメントの真価であった。しかし、インターネット時代を迎えて、如何に、変更に対応していくかの方が重要になってきている。システムを作っているうちに競合が同じことを先に実現し、それを上回るためにプロジェクトの中で軌道修正をしていくといったことの方が問題で、絶対的な評価が求められなくなってきている。
 そのような時代に、リーダーシップは、ITのプロジェクトマネージャーにもっとも重要なコンピテンシーになりつつある。つまり、プロジェクトマネージャーから、プロジェクトマネジメント「リーダー」になることが求められているのだ。

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