第6回(2004.10.04) 
品質に対する高い意識を持ち、目標達成のための継続的な改善を行う
 

◆◆品質に対する意識
 品質に無関心なプロジェクトマネージャーはいないだろう。プロダクトの品質には最大の関心を示し、品質向上には、チームとして最大限の努力を払う。これはプロジェクトマネージャーとしては当たり前のことだ。

 一方で、プロダクト以外の品質については意外に関心が低い。PMBOKがISO9000を規範にしていることからも分かるように、プロセスの品質は重要である。しかし、実際には計画はさほど重視されず、プロダクトの品質に関心は集中している。

 CCPM(クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント)という手法がある。ゴールドラット博士のTOC(制約論理)をプロジェクト管理に応用した手法である。この理論は、計画の未成熟さによる資源のロスが前提になっており、計画を点ではなく、幅で捉えることにより、全体としてより合理的な計画になるようにしようというものだ。

 われわれの実際の感覚はこちらに近い。計画を作るものの、計画を点として考える人はあまりいない。マイルストーンを使って、幅として捉え、マイルストーンが入れば、計画変更は必要ないと考える。

 これはこれで、コストやスケジュールに注目すれば、合理的な一つのアプローチであるが、このアプローチの弱点は意外なところになる。それは、品質である。

 たとえば、こういう例を考えてみてほしい。ソフトウエアの世界では潜在的なバグはある意味で当たり前になっている。マイクロソフトがWindows NTというOSを発表したときに、潜在バグ数が4桁のオーダーだったというのは有名な話だ。皮肉ではなく、パソコンが完璧に動くと思っている人はそんなに多くはないだろう。社会通念としてそういうものだし、業界的にもバグが完全になくなることはないと考えられている。それゆえに、逆にテスト計画が重視される。如何に効率よく品質を上げるか、あるいは、如何に多くのケースをカバーできるかによって潜在的なバグは大幅に変わってくるからだ。

 同時に、プロセスが重視されるのもこのためである。つまり、プロダクトの品質検査だけでは限界があるので、プロセスを規律正しくすることにより、品質を上げようとする。これはいろいろな意味で正しい。製造業では、その向上の品質レベルを見るのに、工場の整理整頓を見る。これとソフトウエアでレビューをきちんとすれば品質が上がるというのは同じレベルのことだ。

 もう一度、TOCに戻るが、厳密な計画は立てなくてもスケジュールに対する辻褄は合うが、品質の辻褄は合わない。


◆品質を向上するには

 そこで、今回のテーマである「品質に対する高い意識を持ち、目標達成のための継続的な改善を行う」にはどうすればよいかということであるが、以下のようなポイントがある。

 1)ものごとを体系的に捉える
 2)あいまいさを排除する
 3)詳細に注意を払いながら、行動する

 まず、ものごとを体系的に捉える必要がある。最低限、プロダクトとプロセスを見て、品質という視点からポイントを見抜く必要がある。プロダクトに関しては、もともと構造的なものであるので、そんなに問題がない。プロセスは単なる流れとして捉えるのではなく、流れを作っている「構造」をきちんと捉える必要がある。言い換えれば、プロセスをシステムとして認識し、プロセス間(あるいはプロセスの構成要素間)の関係を見抜き、あるプロセスが、他のプロセスやプロダクトにどういう影響を与えるかを認識できないと意味のあるテスト計画はできない。

 その作業の中で重要なことはあいまいさを残さないことだ。個々のプロセスの内容を明確に定義し、プロセスのアウトプットを決め、その決めに沿ったレビューをしなくてはならない。

 かつ、それらの作業は大雑把にではなく、詳細に、注意深く行われなくてはならない。

 特にこれらの行動特性は、プロジェクトの早い時期に、強く求められる。上に述べたようにプロダクトの形が見えてくると、品質はほとんどプロダクトの検査の話になる。しかし、本当の意味で品質のレベルが決まるのは、如何に顧客の要求を汲み取っているか、あるいは、その要求にしたがって、個人がどれだけの高いパフォーマンスで作業を進められるかに依存する部分が大きい。したがって、プロジェクトマネージャーは、体系を明確にし、注意深くメンバーに品質に対する要求をしていく必要があるのだ。


◆この行動特性のためのコンピテンシー

 この3つの行動特性を構成する上でもっとも重要なコンピテンシーは

・徹底的管理力
  ものごとを体系的に捉え,曖昧さを排除し,詳細にまで注意を払いながら行動する

に尽きるといってよいだろう。

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