第15回(2005.04.27) 
習慣化(5)〜「主体性を発揮する」習慣をつける

◆プロアクティブな行動とは

プロジェクトマネジメントで重要とされる考え方に「プロアクティブ」という考え方がある。日本語だと「先んじて動く」とでも言えばよいだろうか。あるいは、結果まで含むなら、「先手必勝」という考え方になろう。

ところが、実際にプロアクティブに行動するのは難しい側面がある。リスクマネジメントで、できるだけ早期にリスク兆候を発見し、それに対処していくという話は分かるのだが、たとえば、識別しているリスクが「プロジェクトを承認する立場の部長が気まぐれで、顧客のちょっとした一言によってプロジェクトの方向性を変えてしまうリスク」があるとすればどうだろうか?まさか、その部長に「気が変わらないでくれ」と直言するといったことはできないだろう。


◆プロアクティブであるためには主体性の発揮が必須

ここでプロアクティブに活動するために考えたい習慣が、「主体性を発揮する」という習慣である。

プロジェクトマネージャーがいくらそのプロジェクトを任されているといっても、すべてを決定できるわけではないし、そもそも、すべてに発言できるわけでもない。これは大変なジレンマである。このような中で、プロジェクトマネージャーが「おかれている状況」で主体的行動をするとはどういうことかを考えてみたい。

主体的に行動した場合、プロジェクトマネージャーがおかれている状況に対して、どのような影響力を持っているかが最大の問題になる。PMBOKではチーム育成に必要なプロジェクトマネージャーのスキルとして、母体組織に対する影響力というスキルが掲げられているがまさにそのとおりである。しかし、与えることのできる影響がヒューマンスキルによって変わることは間違いないが、そもそも、ヒューマンスキルはカタリストであり、仕組み的に影響を与えられないものには、いかにヒューマンスキルが卓越していても影響を与えることはできない。

◆影響に注目して行動パターンを整理する

そこで、何か、困った状況に直面したときに、常に、与えることのできる影響を3つに分けて書き出してみるような習慣づけをしていくとよい。その3つとは

 ・コントロールできるもの
 ・間接的に影響を与えることができるもの
 ・どうしようもないもの

である。たとえば、ITプロジェクトでは、ユーザ(顧客)が業務の多忙を理由になかなか要件分析の作業が進まず、仕様が決定しないことがある。このようなスケジュール遅延が発生したときに何ができるかということを考えてみよう。

この問題に対しては、与えることのできる影響はあまり多くない。まず、コントロールできるものとしては(典型的には)

・納期の再確認
・スケジュールのシミュレーションと一定の遅れを前提にして納期に収まる再計画をする
・ツールの提供と作業支援の申し出

といったことが考えられる。次に、間接的に影響を与えることができることとしては、

 ・自社の相応の人から、顧客のプロジェクトの母体組織やPMOに対してアプローチを  して、プロジェクト対応のプライオリティを上げてもらう

といった方法が考えられる。最後にどうしようもないこと。たとえば

 ・顧客の業務スケジュールを変更する

これを考えてもこのプロジェクトの中では文字通りどうしようもないのだが、レッスンズラーンドにはなる。


◆間接的な影響を与える行動はステークホルダ分析から

主体的に行動できるかどうかは、このように整理してみたときに、間接的な影響を与える手段を如何に巧みに設定できるかと、かつ、実行できるかである。このような間接的な交渉というのが主体的に行動できるポイントになる。

間接的な影響行動をしっかりするためには、何よりも、計画の中でステークホルダマネジメントをしっかりと行っておくことが必要である。通常はステークホルダマネジメントはコミュニケーション計画策定の手段として行うが、プロアクティブな行動をとっていくためには、コミュニケーションの必要性だけに着目するだけではなく、プロジェクトに対する影響力に注目したステークホルダ分析が必要になるだろう。

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