第2回(2006.04.14)
ステークホルダ分析
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 

前回はRAMを取り上げました。今回は、ステークホルダー分析を取り上げます。

◆ステークホルダー分析
ステークホルダー分析は、PMBOK2000では、人的資源知識エリアの組織計画、コミュニケーション知識エリアのコミュニケーション計画のツールと技法でした。が、PMBOK3では、人的資源計画(組織計画)はネットワーキングと具体的な活動に変更になり、コミュニケーション計画はコミュニケーションに対する要求事項の分析と変更になり、ステークホルダー分析をよりコミュニケーションに対象を絞った分析になっています。

この2つのプロセスのためにも、スコープ知識エリアのスコープ定義でのツールと技法であるステークホルダー分析は、きっちり分析を行っておく必要があります。

スコープ定義では、何を行うかといいますと、ステークホルダー分析を行うことによって、スコープとステークホルダーの要求・影響とを調整し、プロジェクト・スコープ記述書を作成します。

それでは、ステークホルダー分析とは何をどのように分析するのでしょうか。

ステークホルダーとは、プロジェクトの利害関係者のことです。どんな利害がある関係者かといいますと、

・プロジェクトに積極的に関与している個人や組織
・プロジェクトの実施や完了の結果が自らの利益にプラスやマイナスの影響を
 受ける個人や組織

であり、具体的には、プロジェクト・マネジャー、顧客・ユーザー、プロジェクト・チームメンバー、母体組織、スポンサーなどです。

したがって、ステークホルダーはプロジェクトから影響を受けるとともにプロジェクトに影響(プラスとマイナス)を与える人や組織です。
プロジェクトを成功させるためには、ステークホルダーから受けるプラスの影響を増やし、マイナスの影響を減らすことが必要です。

そのために、ステークホルダーの識別を行い、ステークホルダーの要求と影響を明確にし、そのステークホルダーの要求と影響をマネジメントしていきます。前者のステークホルダーの識別、要求と影響の明確化がステークホルダー分析であり、後者のマネジメントが、コミュニケーション知識エリアの監視コントロールプロセス群のステークホルダー・マネジメント(PMBOK3から追加されたプロセス)で
す。

ステークホルダー分析とは、ステークホルダーの利益と影響を識別し、そのニーズ・要望・期待を選択し優先順位付けし、要求事項を作成することです。

が、ステークホルダーはプロジェクトと必ずしもプラスの関係ばかりではなく、プロジェクトからマイナスの影響を受けたり、プロジェクトにマイナスの影響を与えるステークホルダーも存在します。

例えば、新しい経営情報システム構築をプロジェクトに依頼した部門長は低コスト・納期短縮を期待し、プロジェクトにプラスの影響を与えるかもしれませんし、プログラム請負業者は利益を最大に望み、納期短縮を嫌うかもしれません。

このように、ステークホルダーの中にはニーズ・要望・期待・関心などがまったく異なり、プロジェクトの利益に対して相反することを望むステークホルダーも存在します。かえって、マイナスの影響についての分析が後々、重要になることが多かったりもします。

具体的には、プロジェクトと少しでも関連のあるステークホルダーを識別し、それぞれのステークホルダーに対して、プロジェクトとの関係(利益は相反するのかどうか)、どんな影響(たとえば、予算、スケジュール)を与えるのか、何に対して最も関心を持っているのか、ニーズは何かなどを分析し、文書化(表が望ましい)していきます。

ぜひ、ステークホルダー分析を行い、そのプラスやマイナスの期待・関心に沿うようにコミュニケーション計画を作成し、ステークホルダー・マネジメントを行いましょう。

次回は、人的資源知識エリアのプロジェクト・チームのマネジメントのツールと技法であるコンフリクト・マネジメントです。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。
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