第16回(2006.09.01)
リスクマトリクス
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 
前回は、リスクの原因の識別や因果関係のメカニズムを解明するための図解の技法(特性要因図、フローチャート、インフルエンス・ダイアグラム)を取り上げました

インフルエンス・ダイアグラム

今回は、「定性的リスク分析」のツールと技法であるリスクマトリクスを取り上げます。
「定性的リスク分析」では識別したリスクの優先順位付けを行いますが、その際によく使われるツールとしてリスクマトリクスがあり、PMBOK3では、発生確率・影響度マトリックスと呼ばれています。

これは、発生確率と影響度をインタビューや会議などで査定し、リスク・マネジメント計画で決められたリスク等級の定義にしたがってそれぞれのリスクに発生確率と影響度の等級をつけるマトリクスです。
リスク・マネジメント計画で定義される等級とは、例えば、影響度であれば、大中小や1〜5などのランク付けを定義しておくことで、その定義はタイムを例にとると

遅延が軽微な影響であれば「非常に低い」または0.05
遅延が期間の5%未満  「低い」   または0.1
遅延が期間の10%未満 「普通」   または0.2
遅延が期間の20%未満 「高い」   または0.4
遅延が期間の20%超  「非常に高い」または0.8

のように判断の基準を決めておき、数値化しておくことです。この他、スコープやコスト等での基準もリスク・マネジメント計画で決めておき、リスクの分析をする際にこの基準に従って、査定をしていき、どの等級に当てはまるかを決めていきます。

何故、数値化するかといいますと、同様に発生確率も基準を決めて数値化しておき、影響度と乗算することで、期待値が計算され、リスク対応の優先順位を決めることができるからです。

優先順位は、発生確率と影響度の乗算の結果が、ある数値以上を高リスク(積極的にリスク対応をする)、中リスク(リスク対応を考える)、低リスク(リスク対応はしない)と分類します。

リスクマトリクスとは、横軸(列)に影響度、縦軸(行)に発生確率を5段階または3段階に分けて作成したマトリクスのことで、その分け方はこれまで、述べたように、リスク・マネジメント計画で決めておいた等級にしたがって行います。
そして、それぞれのリスクを影響度と発生確率によってマッピングしていき、高リスク(例えば赤色)、中リスク(例えば黄色)、低リスク(例えば緑色)に色分けしていくことで、プロジェクトのリスクの状況を一別できるマトリクスです。

そして、優先順位の高いリスクについては、この後のプロセスである「定量的リスク分析」でさらに分析を重ねていき、もっとも注目すべきリスクを査定していきます。

次回は、「定量的リスク分析」のツールと技法であるデシジョン・ツリー分析とモンテカルロ・シミュレーションを取り上げます。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。
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