第8回(2005.08.03) 
これは使えるぞ!PMBOK3(8):コスト
 

 前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト・コスト・マネジメント
コスト知識エリアには、計画プロセス群と監視・コントロールプロセス群のプロセスがあり、2000では最初のプロセスであった「資源計画」が「アクティビティ資源見積り」に名称変更され、タイム知識エリアへ移動しました。

プロジェクト・コスト・マネジメントはプロジェクトを承認済みの予算内で完了するために必要なプロセスから構成されています。

○「コスト見積り」
「コスト見積り」は、スケジュール・アクティビティに関するコストを、プロジェクトで費用を負担するすべての資源に対して見積もるプロセスです。インプット、ツールと技法、アウトプットが2000から少し変更されました。

まず、インプットにプロジェクトマネジメント計画書が追加されていますが、その一部であるスケジュール・マネジメント計画書、コスト・マネジメント計画書は、他のマネジメント計画書(スコープ計画で作成されるプロジェクト・スコープ・マネジメント計画書など)とは異なり、特に作成されるプロセスは明記されず、統合知識エリアの「プロジェクトマネジメント計画書作成」で作成されています。
コスト・マネジメント計画書には、アーンド・バリューの評価基準や計算の有効桁数などが記載されます。

「コスト見積り」のインプットとしてプロジェクトマネジメント計画書が追加され、コスト・マネジメント計画書は特に明記されていませんが当然、参考にしますので、インプットとして使用するはずと考えています。

それでは、何が明記されているかといいますと、他の知識エリアであるスケジュール・マネジメント計画書、要員マネジメント計画書、リスク登録簿が明記されています。

スケジュール・マネジメント計画書には、それぞれのスケジュール・アクティビティの実行に必要な要員、機材、物資の数量が記載され、コスト見積りと密接に関連しています。
要員マネジメント計画書からは、プロジェクト要員の特性や単価が必要です。
リスク登録簿では、リスク対応策に関する情報を考慮して見積りを行います。

ツールと技法には、予備設定分析と品質コストが追加されています。
予備設定分析は、スケジュール・アクティビティ個々にコンティンジェンシー予備を含むのではなく、予備費として別に設ける考え方です。また、品質コストを考慮して、スケジュール・アクティビティのコスト見積りを行うこともあります。


○「コストの予算化」
「コストの予算化」は、プロジェクトのパフォーマンスを測定するコスト・ベースラインを設定するために、スケジュール・アクティビティやワーク・パッケージの見積りコストを集約します。
インプットには、プロジェクト・スコープ記述書が追加されています。プロジェクト資金に関して期間ごとの限度額がある場合、予算の制約条件となるからです。また、アウトプットに、プロジェクト資金調達に対する要求事項が追加されています。PMBOK3では、キャッシュ・フロー予測、コスト・ベースライン、資金調達のグラフが図示され、コスト・ベースラインよりキャッシュ・フロー予測が下回る場合、必要な資金を示しています。このように、PMBOK3では資金についての考えが取り入れられたようです。

●「コスト・コントロール」
「コスト・コントロール」では、以下の作業を行います。
・コスト・ベースラインに変更をもたらす要因に働きかける
・要求された変更に対する合意を得る
・変更の発生に際し、実際の変更をマネジメントする
・コスト・ベースラインとの差異を検出し、コスト・パフォーマンスを監視する
・適切なステークホルダーに、承認済み変更について知らせる

PMBOK3では、「コスト・コントロール」の大きな役割であるコスト・パフォーマンスの監視(ツールと技法のパフォーマンス測定分析)について、アーンド・バリュー法を大きく取り上げています。アーンド・バリューはコスト・ベースラインと実際に発生したコスト、予算コスト(完了した成果物を金銭換算した金額)を比較し、コスト差異、スケジュール差異という二つの観点からプロジェクトのパフォーマンスを監視する手法です。

詳細はこちら


今回はコスト知識エリアのプロセスについて記述しました。
次回はいよいよ品質知識エリアです。


◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.