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第97回(2006.05.02) 
学習する組織に変える(その1)

◆過去の挫折

戦略ノート第26回(2002年11月25日)に「学習するプロジェクト」という記事を書いた。書き出したときには、何回かかけて言及するつもりだったのだが、挫折。

第64回〜67回(2004年8月23日〜9月13日)にも再び、レッスンズラーンドのような視点から再度学習の問題にチャレンジして、一応、まとめてみたが、会心とまではいかなかった。

著者は組織学習の問題は、プロジェクトマネジメントのもっとも本質的な課題だと思っている。しかし、いざ、記事にしようとするとなかなか、うまくいかなかった。これからしばらく、再々度、組織学習の問題についてやるつもりであるが、今回は、まず、過去2回がうまくいかなかった理由を説明しておきたい。


◆組織学習とはどういう問題か

この戦略ノートはずっと「プロジェクトマネジャー」のために書いてきた。メルマガのタイトルが「プロジェクトマネージャー養成マガジン」であったため、こだわりがあり、いろいろなテーマからプロジェクトマネジャー向けの部分だけを切り出してきたのだが、中にはそのような切り出しが無理なテーマがある。その一つがこの組織学習の問題である。組織学習の問題は非常に単純化すれば、第64回〜67回に書いたようにレッスンズラーンドの問題だと考えれらる。ただし、これはあくまでもプロジェクトマネジャーの視点から見た場合であり、組織としてはここにナレッジマネジメントが絡んでくるし、もう少し、広く捉えるならば制度(標準プロセス)やガバナンスの問題が絡んでくる。

つまり、プロジェクトマネジャーの視点からみれば、あるプロジェクトで得られた教訓を「プロジェクト事例発表会」のようなものを行ってみんなが共有する。これは、多くの企業が取り組み始めている取り組みである。しかし、この取り組みは、組織としてのプロジェクトマネジメント力の強化にはあまり効果がない。共有といいながら、個人に対して知恵をつけるだけであって、そこに組織としての価値や問題意識を共有するレベルまで言っていないからだ。


◆PM力強化の幻想

このような「誤解」が生じている理由は明確で、

 個々のプロジェクトマネジャーの能力強化=組織のPM力強化

だと捉えているからだが、この方程式は、「保守的な組織マネジャーの願望」に過ぎない。もっといえば、官僚主義が形を変えて出てきているだけである。組織というのは「システム」である。その組織で、下位のマネジャー(つまりプロジェクトマネジャー)が変わり、上位のマネジャー(つまり、組織そのもの)が変わらないと、真っ先に下位のマネジャーがジレンマに陥る。プロジェクトマネジャーを育成するためには、同時に組織を変えなくてはならない。これはPMに限らずリーダー育成の原則である。


◆トヨタがすばらしいのは現場か?

ひとつの例を挙げればトヨタである。トヨタの現場はすばらしいというのは定説になっている(最近、サプライヤーマネジメントでほころびが見られ、現場力が弱くなっているという雑誌記事をよく見るが、それでもやはり群を抜いている)。これが現場の努力だけで成り立っていると思うのは大きな間違いで、本格的なトヨタの研究書を読むと、現場を支える強力な経営管理があることが分かる。ちょっと考えてみれば、トヨタのシステムが現場の努力だけでは成り立たないうことは明確であるが、、、興味がある方は、たとえば、

 ザ・トヨタウェイ

などを読んで見られるとよい。


◆育ってきたPMのジレンマに頭を抱える企業

著者はプロジェクトマネジャーの人材育成の提案を行う中で必ずこのことを言ってきたが、理解してもらえる企業はたくさんあったが受け入れてもらえた企業はほんのわずかだった。実際に、今、IT業界では大手の人材育成が一段落し、各企業ともこの問題に頭を抱えている。もっとも典型的な問題は、ラインマネジャー(シニアマネジャー)とプロジェクトマネジャーの間の関係(リソースをめぐる権限の対立、あるいは、丸投げなどの不健全な関係)である。これは、プロジェクトマネジャーがものの考え方を変えているにもかかわらず、ラインマネジャーが従来の考え方のままで業務を進めていることに起因する。たとえば、従来の組織マネジメントとプロジェクトマネジメントにおけるレスポンシビリティ(責任性)とアカウンタビリティ(説明性)に対する考え方の違いは、深刻であり、このあたりから、日本式プロジェクトマネジメントの必要論などが起こってきたりしているケースも少なくない。悲惨なケースはラインマネジャーがプロジェクトマネジャーになった場合で、自らの中での葛藤に苦しむことになる。


◆放っておくと元に戻る

ジレンマの先は見えている。当然、組織の方が強い。一旦、触発されて決心したPMも長いものに巻かれるようになり、新しいやり方をしようと努力しなくなる(実際に、決心したところですぐに動けるわけではないので、傍から見れば何も起こらなかったように見えることもある)。

いつのまにか、元の組織に戻る。数千万〜数億円のプロジェクトマネジメント力強化の投資が無駄になるという構図が先にある。特に、PM以前に基本的なマネジメントの仕組みがなかった企業では本当に無駄な投資になる可能性がある。


◆これからの戦略ノート

このような状況はなんとかして避けたいものである。

この戦略ノートは今月で100回を迎えるが、100回を契機に視点をプロジェクトマネジャーから、組織に変えていくつもりである。つまり、今まではプロジェクトマネジャーがプロジェクトマネジメントを上手にやるにはという視点で書いていたが、これを組織としてプロジェクトマネジメントをうまくやるにはという視点で書いていく。もちろん、その中の主役はプロジェクトマネジャーなので、そんなに大きく変わることはないが、話の範囲が広くなると考えておいてもらえばよい。たとえば、上のような議論はこれまで避けてきたが、今後は積極的にしていくつもりだ。

お楽しみに!

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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