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第94回(2006.04.11) 
プロジェクトマネジメントチーム

プロジェクトマネジメントチーム

◆プロジェクトマネジャーの仕事

今回は、プロジェクトマネジメントを誰が行うのかという問題について考えてみたい。プロジェクトを率いていくのはプロジェクトマネジャーであり、責任もプロジェクトマネジャーが持つ。これは間違いないだろう。

しかし、プロジェクトマネジメント作業を誰がするかというと、少し、話が複雑になる。


◆プロジェクト管理事務作業をする人たち

PMBOK(R)のプロジェクトの構成図(説明図)には、「プロジェクトマネジメントチーム」という概念が出てくる。プロジェクトメンバーとして、プロジェクトマネジャーの仕事を補佐する仕事である。

これは具体的にはどのような形で実現されるのか?プロジェクトマネジャー以外に、アシスタントPMといった補佐役を制度化している企業がある。アシスタントPMは意思決定の支援をするようなニュアンスが濃いが、いずれにして意思決定の支援をすることの一部には意思決定に必要な情報活動が含まれることは間違いなく、それはプロジェクト管理事務作業とかなりオーバーラップしている。

SIのプロジェクトでは、大規模なプロジェクトでは、PMOをプロジェクト内に設置するケースがある。これも基本的には同じで、プロジェクトマネジメント事務作業を行う役割である。昔流の言い方でいえば、「事務局」機能である。進捗をまとめて上位マネジャーやエグゼクティブ向けの報告書を作成したり、会議のセッティングをしたり、結構、忙しい役割である。

さらにいえば、このような支援はプロジェクト内で抱える必要はなく、シェアドサービスとして実現していけばよいという考え方も成り立つ。そこで、出てくるのが一般的な意味でのプロジェクトマネジメントオフィスである。

このあたりまでが、プロジェクトマネジメントを実行する主体の範囲ということになるだろう。

このあたりまではそんなに違和感はないだろう。実は、このようなケースは本質的にはプロジェクトマネジメントはプロジェクトマネジャー一人でやっているに等しい。

プロジェクトマネジメントにとって、より本質的な話はプロジェクトにおける意思決定とチーム作りを誰が行うかだ。


◆合議制の意思決定をするプロジェクト

この議論をする前に、一つ、興味深い企業を紹介しておく。

著者が関わりを持っている中堅SI企業S社では、プロジェクトマネジャーという役割をおいていない。事業形態は一般的なSI企業と同じで、顧客から案件を受注して、開発し、引き渡すというビジネスを行っている。

この企業ではプロジェクトマネジメントという概念はあるが、いわゆるプロジェクトマネジャーに相当する役割の人を置いていない。PM導入以前のSI企業によく見られた、プロジェクトの取りまとめ(総括)といった役割も特においていない。プロジェクトマネジメントを誰が行うかという点において極めてあいまいな体制をとっている。プロジェクトの担当者の間で、協議をしながら、プロジェクトを進めていくというスタイルをとっている。PMBOK(R)流にいえば、プロジェクトマネジメントの任命が行われていないのだ。

一応、職制上、各プロジェクトには最低でも一人、係長(最初の役職)級の人材が入ることになっており、彼らが自律的にマネジメント組織を作って、それで運用している。ただし、マネジメント組織を作ることも組織として決めているわけではない。プログラムマネジャーはいるが、主な役割は収益計画と収益目標の設定であり、基本的にはプロジェクト内には入り込んでこない。

プロジェクト計画を作るとき、レビュー、問題が起きたときの対応など、ほぼ、プロジェクトマネジャーが活躍しなくてはならない局面は、合議でプロジェクトを運用している。さらに、面白いことに、これらの人材は一つのプロジェクトに専従していない。複数のプロジェクトを参加していることがほとんどである。

おおよそ、一般的なプロジェクトマネジメントからはかけ離れた方法でプロジェクトを運用しているにもかかわらず、この企業は、スケジュールで競争力のある提案をしている。RFPの内容を無視するかのように、1年の要求に対して、平気で9ヶ月といった提案をしていく。顧客によっては、却って不安を抱く顧客もいて、これが今後の課題の一つだそうである。

組織論の用語でいえば、「自律型チーム」であるが、プロジェクトにおける自律型のチームを作るもっもと合理的な方法は、おそらく、マネジメントチームを自律型のチームとすることであろう。その意味でこのS社のやり方は興味深い。なぜ、このような提案ができるのかをぜひ考えてみてほしい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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