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第92回(2006.03.27) 
ICB(1)

◆ICBとは

ICB(International Competency Baseline)はIPMA(International Project Management Association)の策定しているプロジェクトマネジメント標準である。日本では、PMBOK(R)が中心であり、名前を知っている人も多くないが、EUでは普及している標準であるが、近年、IPMAが年次大会をインドで行うなど、アジア市場を睨んだ活動をしているのが注目される。


◆ICBの特徴

この標準の特徴は2つある。一つは、プロジェクトマネジメント標準(知識体系)と、PMコンピテンシーを一つのモデルで表現している点である。これはプロジェクトマネジメントのあり方を考える上で、非常に興味深い。PMBOK(R)のようにプロセスを規定し、そのプロセスにツールや手法を張り付けていくことはある意味で実用的である反面、組織に導入するためには、組織のプロセスとの整合性をとるのが厄介である。また、そもそも論として、「マネジメントプロセス」というものが存在するのかという議論もある。つまり、PMBOK(R)が目指すところは、「限りなく管理に近いマネジメント」である。

これに対して、ICBは、知識、経験、態度(個人的資質)を体系(コンピテンシーベースライン)として与えているだけであり、プロセスそのものには言及していない。
つまり、ICBのモデルというのは、プロジェクトマネジメントに関する標準的な知識、経験、パーソナリティを持ったプロジェクトマネジャーが、自分の考えてプロジェクトマネジメントを組み立てていくというモデルである。

戦略ノートで何度も触れているように、そもそも、マネジメントには正しいプロセスは存在しないと考えている。マネジメントとは「目的」の達成のために、現状と目標の差異を把握し、手を変え、品を変え、チームやひとやプロセスを動かしていくことである。そのように考えると、コンピテンシーだけを与える方が現実的であるといえる。

もう一つの特徴は、国ごとにカスタマイズしていることである。これも興味深い。一応、IPMAが標準を決めているが、EUの各国がカスタマイズしたICBを定めるという展開をしている。PMBOK(R)でいえば、PMITが日本語版を作っているようなものだ。これは、PMIの組織展開は国に関係ないブランチ方式であるのに対して、IPMAの方は国単位で展開している違いだともいえるが、対照的である。実はこの構図はWANの世界で同じ対立があったが、結局、米国方式ともいえる、国家に無関係な方式が勝った。さて、プロジェクトマネジメントの世界ではどうなるかといったところだ。


◆ICBの42の知識と経験
ICBではプロジェクトマネジャーに必要は知識と経験として以下に示す42を定めている。

1)プロジェクトとプロジェクトマネジメント
2)プロジェクトマネジメント実行
3)プロジェクトによる経営
4)システムアプローチとインテグレーション
5)プロジェクト環境
6)プロジェクトのフェーズとライフサイクル
7)プロジェクトの構想と評価
8)プロジェクトの目的と戦略
9)プロジェクトの成功と失敗の指標
10)プロジェクト立ち上げ
11)プロジェクトの終結
12)プロジェクトの構造
13)成果、スコープ
14)スケジュール
15)リソース
16)プロジェクトコストとファイナンス
17)成果物の構成と変更
18プロジェクトリスク
19)パフォーマンス測定
20プロジェクトコントロール
21)情報管理、記録、報告
22)プロジェクト組織
23)チームワーク
24)リーダーシップ
25)コミュニケーション
26)コンフリクトマネジメント
27)調達と契約
28)プロジェクト品質
29)プロジェクトにおける情報配布
30)標準と規則
31)問題解決
32)交渉、ミーティング
33)上位組織
34)ビジネスプロセス
35)人事
36)組織学習
37)チェンジマネジメント
38)マーケティング、プロダクトマネジメント
39)システム管理
40)安全、衛生、環境
41)法務
42)ファイナンスと会計

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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