PMstyleはこちら
第88回(2006.01.23) 
プロジェクトを手の内に入れる(1)

◆キーワードは「手の内に入れる」

PMBOK(R)のプロセスの中にControlというプロセスがある。日本語版では管理・統制と訳している。プロジェクトをコントロールするというのと、統制するというのは日本語とはちょっとニュアンスが異なっているように感じている。

プロジェクトがきちんとコントロールできているとは、日本語でいえば、「手の内に入る」というの表現が適切だと思う。手の内に入るというのはどういうことか?

手の内に入れるという言葉はいろいろな局面で使われる。もっともよく使うのは、競馬の世界かもしれない。競馬の世界では「馬」を手の内に入れるということが言われる。これは

馬の性格や脚質を熟知し、自由自在に御すことが出来るようになること

である。馬が道具だというと、競馬ファンはけしからんということになると思うが、道具を手の内に入れるというのもよく使われる。たとえば、センサーを手の内に入れるという言い方をすることもよくある。センサーの特性を熟知し、精度の高い計測を可能にすることだ。もう少し、規模の大きいところでは、自動車やプラントを手の内に入れるとかいう言い方をする。これもやはり、馬やセンサーと同じ意味合いである。ほかにもチームを手の内に入れるという使い方をすることもある。これはチームビルディングを意味していることが多い。

また、生殺与奪を手の内に入れるという表現もあるし、人を手の内に入れるという言い方をする人もいる。さらにいえば、企業の経営を手の内に入れている経営者もいる。


◆熟知し、自由自在に御する

このように対象は何であれ、対象を熟知し、自由自在に御すことができることを手の内に入れるという。ここで注意してほしいのは、馬にしても、センサーにしても、デジタルには動かない部分があることだ。その意味での不確実性を持っており、その不確実性を熟知し、自由自在に御すことができるようになることを手の内に入れると表現している。コントロールするとはそういうイメージである。

プロジェクトマネジメントでコントロールという言葉が真っ先に出てくるのは、リスクである。リスクをコントロールするとはどういうことか。以前、戦略ノートでも書いたことがあるが、アイスバーンの上を車をスリップを御しながら運転する。これがリスクをコントロールするという意味だ。つまり、リスクをコントロールするとは、さまざまな「リスク事象」について熟知し、自由自在に御すことであるといえる。


◆プロジェクトを手のうちに入れるとは

「プロジェクトをコントロールする」ことも同じように捉えることができる。プロジェクトについて熟知し、自由自在に御すことである。さて、これはどう解釈すればよいのだろうか?いくつかの側面があるだろう。

まずは、自由自在に納期やコストの設定を自由自在に行えることである。もちろん、トレードオフバランスの範囲内であるが、これは理屈の上では容易であるが、結構、難しい。たとえば、チームやメンバーの特性を把握していないとこんなことはまずできないし、パフォーマンスのマネジメントがうまくできないとやはりできない。

たとえば、こんなことを考えてみてほしい。あなたの担当する製品開発に対して、設計作業に入った後で、競合の動向がわかり、予算を50%増しするので、製品発売時期を3ヶ月前倒しにしてくれという指示があったとしよう。もし、50%と2ヶ月のバランスが取れているなら、このような要求に確信を持って応えられるだろうかという課題である。

プロジェクトマネジャーとしては、ぜひとも、プロジェクトを手の内に入れることができるだけのスキルを身につけていきたいものだ。


◆プロジェクトを手のうちに入れるには

では、プロジェクトを手の内に入れるにはどうすればよいか?これはまた、そのうち。

興味をお持ちいただいた方に、お知らせ。

製品開発プロジェクトをフォーカスし、プロジェクトを手の内に入れるというテーマのセミナーを行います。

 売れる商品を作るプロジェクトマネジメントとは

◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ◆コンセプチュアルプロジェクトマネジメント               ◆7PDU's 
          〜コンセプチュアル思考でプロジェクトを動かす
  日時:【東京】2019年 03月 27日(水)〜28日(木)  10:00-18:00(9:40受付開始)
  場所:国際ファッションセンター(東京都墨田区) 
  講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
  詳細・お申込 http://pmstyle.biz/smn/conceptual_pm.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス,共催PMAJ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【カリキュラム】                     
 1.概念的に考えて、具体的な行動をする
 2.本質を見極めるスキル
 3.洞察力を高める
 4.顧客の要求の本質を見極める
 5.コンセプトを創る
 6.コンセプトを実現する目的と目標の決定
 7.要求の本質を見抜いたスコープ定義
 8.本質的な目標を優先する計画
 9.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
 10.本質的な問題解決
 11.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前の記事 | 次の記事 | 記事一覧
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

メルマガ紹介
本連載は、「PM養成マガジン」にて、連載しております。メルマガの登録は、こちらからできます。
スポンサードリンク