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第50回(2004.02.16) 
「とりあえず」
 

◆知人からのメール〜日本は「とりあえず」の社会だ
 知人から、日本は「とりあえず」の社会だという指摘をしたメールを貰った。彼が言うには、

明治のとき、”とりあえず”、全国に郵便組織をめぐらすため、現在で言う、特定郵便局の網をつくった。すばらしく上手くいった。

学校制度も、”とりあえず”、分けもわからず、こうかな、ということで、全国に、網をつくった。これも、上手くいった。

などなど。確かにこんな例は、枚挙に暇がない。

 彼の指摘はさらに続き、とりあえずを支えている「具体的な思想、考え」がないので、本当に行き詰らない限り、とりあえず作ったものを使い続けるしかないという。確かに、現代は、そこらじゅう、制度疲労だらけだ。


◆「とりあえず」のプロジェクト計画
 著者がこのメールを読んだときに、真っ先に連想したのがプロジェクト計画である。システムでいえば、見積もり基準がない、見積もりそのものが難しい、技術変化が早いなどさまざまな理由で、計画が「とりあえず」作られていることが多い。

 ところが、「とりあえず」作った計画ほど、たちの悪いものはない。いざ、計画を変えるべきところで計画を変えることができない。言い換えると、トラブルが起こるまで計画を変えることができない。なぜか。

 彼の指摘と同じところに根源がある。計画を作った背景になっている思想、考え、方針といったものがない。思想や、考え、方針があれば、大局的にプロジェクトをみて、状況が変わってくれば、そのギャップを埋めるように計画を変更するすることができる。

 ところが考えがなければ、本当に行き詰ったとき、トラブルが起こったときに、目先の障害を避けることしかできない。このパターンで失敗しているプロジェクトがなんと多いことか!

◆PMBOK(R)に「とりあえず」はない
 これをリスクマネジメントの問題だと認識できる人は半分正しい。リスクマネジメントの中で、コンティンジェンシープランを作ることは大変難しい。この理由も実は同じところにある。方針のない計画に対するコンティンジェンシープランというのは結局のところ、経験を書いているに過ぎない。リピート性の高いプロジェクトならともかく、ITのようにツールも、制約もどんどん変わっていくプロジェクトでそのような発想で、コンティンジェンシープランが作れるはずがないのだ。

 PMBOK(R)はさまざまな点で英知の塊であるが、その一つはこの点を意識にしていることであるし、この点はPMBOK(R)の本質の一つでもある。PMBOK(R)は計画に必ず方針を求めている。上に述べたように、方針が明確であれば、事象を見なくても方針と現況を比較することによって、プロアクティブな判断ができる。

 ところが、PMBOK(R)の導入をするときに、この点をきちんとインプリメントできていない企業が多い。

◆「とりあえず」は強み

 米国にMBA留学をしていた読者なら、「とりあえず」など、とんでもないというだろう。仮説思考は許せても、「とりあえず」は許せない。ところが、著者が国内留学した神戸大学では、「とりあえず」が強みでもあることを教えてくれた。ここがやっかいなのだ。「とりあえず」と「カイゼン」はセットなのだ。「とりあえず」があるから「カイゼン」があるといってもよい。

 ここが実は極めてやっかいなところである。弱みだけであれば、「とりあえず」は止めようといえばすむ。ところが、「とりあえず」を排除すると、能力競争に破れてしまう危険すらある。

◆とりあえずは、DNAか?
 ひょっとすると、「とりあえず」は日本人のDNAなのかもしれない。このメールを読んで、「プロジェクトマネージャー養成マガジン」の文書検索をしてみたら、著者もとりあえずという言葉を結構使っている。

 その日本式を体系化したプロジェクトマネジメント手法がCCPM(クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント)である。

 ここ10年くらい、PMに関わってきて、なぜ、CCPMではなく、PMBOK(R)なのかというのは著者の感じる謎の一つなのだが、それこそ、「とりあえず」米国のやっていることをまねていればうまく行くという発想なのかもしれない。

 といっても、CCPMも米国発なのだが、、、

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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