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第296回(2012.10.16)
日本人は真のチームを作れない

◆チームとグループは違う

マッキンゼーのコンサルタントで、チームマネジメントの世界的な権威であるジョン・カッツェンバックは、20年位前にチームとグループは違うと指摘した。

概念的な言い方だが、1+1が2以下であるのがグループで、1+1が2以上になるのがチームだという。たとえば、5人の人が集まったときに3〜4人分の仕事しかできないのがグループで、7〜8人分以上の仕事ができるのがチームだという意味だ。


◆プロジェクトマネジメントもグループからチームへ

プロジェクトマネジメントが実現しようとしているのは、最適なグループである。そのために、WBSで仕事を分け、担当者(グループ)を決める。できる限り、仕事の独立性を確保することによって、各担当者はお互いにコミュニケーションしなくても、ゴールに辿りつけることを理想としている。

たとえば、5人のチームで、何もせずに5人分の仕事を与えると2人分近く生産性が落ちると言われているが、これをマネジメントをすることによって5人に可能な限り近づけるのがプロジェクトマネジメントの役割である。

しかし、プロジェクトマネジメントでも、近年はチームが重視されるようになってきた。理由は不確実性が大きくなり、分けてグループを作っても、状況が変化し、分け直さなくてはならないことが増えてきたからだ。


◆日本人はチームを作れない

そこでチームだとなるわけだが、日本人は根っこは個人主義であり、チームワークが苦手である。PMP(R)のプロフェッショナル責任の一つに

「チームやステークホルダーとの互いにプロとしての協調関係」

という項目がある。

5年ほど前に、日経BPの谷島宣之さんにPMstyleのプライベートセミナーで組織的プロジェクトマネジメントに関する講演して戴いたことがある。その際に、この話をされ、一番できていないのは、チームとの互いにプロとしての協調関係ではないかと思うと指摘されていた。同感である。

そのためか、こういう議論になると、すべての人が100%以上のパフォーマンスを発揮すればいいと考えてしまう。


◆個々人が作業するという発想から抜け出す

この方向で考え始めると、迷走する。せいぜい、一人一人が集中し、気持ちよく仕事ができなくてはならない、だから、リーダーシップや人間関係が大切だという程度の話にしかならない。もちろん、このような一面があるのは確かだが、これで本当に、集団が1+1を2以上にできるようになるかというと微妙だ。

チームで仕事をするには、行っている仕事を相互に理解する必要があり、そのためのコミュニケーションに時間を取られている。この問題を解消しなくては生産性は高くならない。

つまり、個々人が作業をするという発想から抜け出す必要があるのだ。チームはチームであり、個人の集まりではない。たとえば、WBSでいえば、ワークパッケージをそれ以上ブレークダウンしないで、チームとしてやっていくことが必要である。


◆チームとなるには

チームとなるのは何が必要か。そんなに複雑なことではない。プロジェクトマネジャーから提示されたゴールにたどり着くために足らないものを判断し、臨機応変にそれを行う。それだけだ。これができるのがチームである。

そのためには、まず、お互いの作業(行動)を把握し、その意味を理解することが必要である。そして、ゴールに向かってさらに必要なことを考え、それに取り組んでいくことが求められる。

ここで重要なことは、コミュニケーションに過度に依存しないことである。チームの中で、別のメンバーに今、何をどのような意図でやっているのかをいちいち聞いていたのでは、とても1+1を2にはできない。

複雑なことではないが、難しいことだ。実現するには、

・明確なゴールとアプローチの共有
・主体性のある行動をする
・他のメンバー全員への目配り
・他のメンバーのやっていることが正しいと考えられる信頼関係
・必要なことを洞察する

の5つは不可欠である。

ただ、これらはあくまでもテクニカルなことである。これだけではできるかどうか、微妙である。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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