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第269回(2011.12.20)
センスについて考える

◆「センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル」

PM養成マガジンの10周年記念セミナーのタイトルを

プロジェクトマネジメントを深化させるもの
 〜センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル

としたら、さっそく、突っ込みがあった。「センス」って何。来年は、この話題をしようと思っているので、とりあえず、前説。

「センスのあるプロジェクトマネジャー」と「センスのないプロジェクトマネジャー」がいることに異存がある人はそんなにいないだろう。

◆「持っている」プロジェクトマネジャー

いきなり、脱線するが、日本ハム・ファイターズの齊藤祐樹投手に対して作られ、最近ではすっかり定着してきた言葉に「持っている」という言葉がある。これもセンスと同じような臭いのする言葉だ。

「持っている」については、リンクアンドモチベーションの小笹芳央さんが分析した本がある。

小笹 芳央「「持ってる人」が持っている共通点―あの人はなぜ奇跡を何度も起こせるのか」、幻冬舎(2011)

この本を読んで、あるIT企業ではプロジェクトマネジャーを「持っている」プロジェクトマネジャーと普通のプロジェクトマネジャー、持っていないプロジェクトマネジャーに分けているという。すると面白いことに、プロジェクトマネジャーのスキルレベルと必ずしも合わないことが分かったそうだ。

興味深かったので、代表を選んで、弊社のPMコンピテンシー診断をしてもらった。さらに興味深いことが分かった。弊社のPMコンピテンシーとの対応でいけば、「持っている」ことと、「顧客クラスター」のコンピテンシーが高いことには、高い相関がみられた。ということは、PMとして「持っている」ことはある程度、コンピテンシーで説明できる可能性がある。


◆センスはコンピテンシーか

さて、センスだが、やはり、関心があるのはコンピテンシーで説明できるかどうかだ。持っているよりコンピテンシーに近いように思うのだが、実際のどうなのだろうか。結論からいえば、センスがあることをコンピテンシーで表現するのは難しいのではないかと思う。

ただし、「センスというコンピテンシー」があってもおかしくないし、ひょっとすると、プロジェクトマネジャーのコンピテンシーディクショナリーを作れるかもしれない。

手始めにセンスをコンピテンシーだとするとどのようなディクショナリーを作れるのか。この問題を考えてみたい。


◆イチローはなぜセンスがいいのか

まず、他の分野で考えてみよう。野球選手でセンスがいいと言われる人がいる。たとえば、イチローだ。イチローとマイナーで暮らしている選手の違いはなんだろうか?スキル、経験、などいくらでも違いは出てくるが、詰まるところ、

野球に対する理解

ではないかと思う。

たとえば、外野に抜けるクリーンヒットも、足で稼いだ内野安打もヒットはヒットである。グランドがなぜダイヤモンドなのか、なぜ内野手と外野手がいるのかといったインフラ的なことから、なぜ9回なのか、どうすれば点が入るのか、といったルール的なこと、ピッチャーや野手の心理など、野球を知り尽くし、常にそれを意識して行動をする。そして、その野球の特徴をうまく利用する。そこに内野安打をたくさん生まれる。これこそ、センスだろう。

同じようなことをよく感じるのが元巨人の江川卓だ。彼の解説を聞いていると、なるほどと思う。野球をよく知っていると素人にも思わせるだけの説得力がある。現役時代の江川は、剛速球投手のイメージとは逆に、高校時代から27球で終わらせることが理想だといっていた。言われればそうだが、こんなことは普通の投手は考えすらしないだろう。野球を熟知すればこその発想だといえる。

こういう発言のためか、江川には、「手抜き」という言葉がついて回っていたが、今、思えば、これこそ、センスではないかと思う。


◆センスのあるプロジェクトマネジャーはプロジェクトを熟知する

このように考えてみると、センスのあるプロジェクトマネジャーというのは、プロジェクトを知り尽くしている人だと言える。ここで重要なことは、おそらくだが、プロジェクトマネジメントを熟知していることではない。そもそも、プロジェクトマネジメントを熟知するなどできないことだ。

プロジェクトを熟知していることだ。プロジェクトを熟知した上で、プロジェクトの特徴をうまく活用してプロジェクトを運用していく。プロジェクトの特徴とは何か。いうまでもなく、

(1)「有期性」:プロジェクトは一定の期間内に目標を達成することを期待された仕事であり、明確な始まりと終わりがある。
(2)「独自性」:プロジェクトが生み出す財やサービスはつねに前例のない独自なもの、新たなものである。
(3)「段階的詳細化」:プロジェクトの成果物や計画は徐々に、段階的に、詳細化されていくものであり、つまり、プロジェクトは変更を前提としている。

である。

アーンドバリューマネジメントだとか、スコープマネジメントだとか、リスクマネジメントだとかいう前に、センスのよいプロジェクトマネジャーはこの3つの特徴をうまく活用してプロジェクトをマネジメントできるプロジェクトマネジャーである。


◆センスの悪いプロジェクトマネジャーの思考パターン

センスがよいとはどのような行動をとることかという議論は次回にするが、このように考えるとセンスのないプロジェクトマネジャー像はすぐに分かる。

・新規要素をプロダクトスコープから外したがる
・従来のやり方に固執し、新しい作業方法を導入しない
・プロジェクトに変更はあってはならないと考える
・納期はない方がよいと考える
・等々

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    2-5 トラブルの本質的な問題の見極め
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   1.プロジェクトに必要な「コンセプト力」とは
    1-1 「コンセプト力」とは
     1-2 コンセプチュアル思考によるコンセプト作成
   2.コンセプト力でプロジェクトを動かす
    2-1 コンセプト・目的・目標の設定
    2-2 要求の洞察
    2-3 計画の策定
    2-4 統合マネジメント  
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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