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第249回(2011.04.05)
難局を乗り切るマネジメントとリーダーシップ(3)
〜長期戦を想定し、戦略を描き、計画的に進める

◆失敗の法則

トラブルに陥り、不適切な対応で、大失敗に終わるプロジェクトには共通的にみられる対応行動がある。

(1)即効性のある対応にこだわる
(2)起こっていることを深刻さを見誤る

の2つである。この2つは深く関係しており、深刻さを感じないから、即効性だけを考えた対応、悪くいえば目先の対応をする。


◆深刻さの把握は難しい

そうはいっても、起こっていることの深刻さは、トラブルの初期の時点では把握しにくいケースもある。

一つの例として要求変更によるトラブルを考えてみよう。プロジェクトを進めていくうちに大きな要求変更があった。変更を飲めば、現在のスケジュールで進めることは難しくなり、コストも膨らむ。

変更の理由は、ユーザ部門のトップの要望だという。ここで、その要求変更によるスケジュールの問題がどの程度、深刻な問題かわからないことが多い。ひょっとすると、ジャストアイデアかもしれない。ひょっとすると、担当者が意向を理解しておらず、大きな構想のもとに、最初に出てきた要求なのかもしれない。

前者であれば、根は深くない。即効性のある対策が有効である。たとえば、その要求に対応するために要員を増員し、対応すればスケジュール通りに納めることも可能かもしれない。

しかし、後者だとすれば、根本的な問題であり、いま見えているものが氷山の一角に過ぎない。即効性のある対策は、状況を悪くすることはあっても、よくすることはない。たとえば、要員を投入しても次の要求変更がでてきて、手戻りが起こり、コストが膨らむだけに終わる。挙句の果てにはコスト対策で安い外注を使い、品質を出せずに、スケジュールが遅れ、コストが膨らむという悪夢のスパイラルに陥る。

現実にはこの判断を初期に行うのは難しい。


◆問題を構造化し、深刻さを見極める

とはいいながら判断をしなくてはまずい。起こっていることが根の浅いものなのか、根本的な問題なのかを見極めるにはどうすればよいか。特に、氷山の一角だとすると判断するのはかなり難しいが、問題を構造化することによってある程度、問題の本質が見えてくる。このためには、なぜなぜ分析のような原因の深堀りをしていく手法が有効である。上のような例はなぜなぜ分析のような直線的な構造化では見つけにくい問題であるのシステム思考のループ図のような手法を使ってもよい。

ただし、問題が構造化できれば済むかというとそんなに単純な問題はない。


◆アカウンタビリティの問題が立ちはだかる

問題を軽く考え、即効的な対策を求める背景には、プロジェクトの上位管理者自身のアカウンタビリティの問題がある。平たくいえば、経営層にちゃんと対応していますというところを見せる必要がある。極論すれば、直面した問題にちゃんと対応していますというところを見せ続ければ、結果として大失敗プロジェクトに終わっても、「やることはやったので仕方なかった」という話で終わってしまう。

個人的なリスクでみれば、即効性のない「妥当な対策」を打つよりは、リスクが少ないのだ。問題の構造としては、このリスクをとらないという問題が「戦略がない」という問題につながっている。日本的なマネジメントの特徴である。何が起こるかは、テレビで目の当たりにしている原発問題を見ていればよくわかるだろう。


◆問題解決が新しい問題を生み出す

目先の問題に対応することによって、新しいリスクや問題を引き起こす。眼の前の問題が消えても、新しい問題が起こる。これだけならまだよいが、新しい状況になって、根本的な原因の残る問題が再発する。

そうしているうちに、時間が経ち、コストは膨らむ。それにより、だんだんできることが限定されてくる。注意しておきたいのは、この状況をプロジェクトが終わったのちに振り返ると、仕方なかったという評価になってしまうことだ。

こういう組織の論理を認識した上で、上位管理者を説得しなくてはならない。これは結構、至難の業である。説得の第一歩が問題の構造化を行い、上位管理者が経営層を説得するロジックを発見することだ。

さらに難しいのは、プロジェクトマネジャーがこのような方針でやろうとすると、自分自身に責任が降りかかってくることだ。おそらく、最初の段階で問題を軽くみようとするのは、現場の指揮をするプロジェクトマネジャー自身が問題の深刻さを薄々気づいていて、責任逃れのためにそのように見立てていることが多いのではないかと思う。

これも乗り越えなくてはならないアカウンタビリティの壁である。


◆長期戦と場当たり的対応では、初期に取るべき対応が違う

深刻な問題であることを宣言したら、長期戦を覚悟することだ。つまり、トラブルから脱出する戦略を描き、そのもとで「計画」を作る。これはプロジェクトマネジメント(リカバリーマネジメント)の本分でもある。

トラブルが発覚したところで、事態の深刻さを理解し、組織のコンセンサスをとれていれば、大失敗は回避できたと思われるプロジェクトは少なくない。

組織的なプロジェクトマネジメントの導入によって、根の浅いトラブル、言い換えるとプロジェクトの中で問題の原因が完結しているプロジェクトについては、うまく対応できるようになってきた。これでプロジェクトの失敗は減ってきた。

にもかかわらず、大失敗がなくならないのは、根本的な原因に手を打つことが、プロジェクトのなかだけでは難しいようなケースである。たとえば、上のトップによる要求の変動という問題は、プロジェクトでは完結しない。このような問題に対しては、冒頭に述べた2つの行動を解消する必要がある。

つまり、長期戦を想定し、戦略を描き、計画的に進めることだ。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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