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第242回(2011.01.11)
なぜ、プロジェクトはつまらないのか

◆自分にとってのプロジェクトの意味づけをしていない

新年早々、ネガティブなタイトルで恐縮だが、年末にある忘年会でこの話題になった。実際のところ、コンサルタントとしてクライアントのプロジェクト憲章などでプロジェクトの企画を見る機会は少なくないが、参加してみたいと思うようなプロジェクトは滅多にない。

いろいろな意見が出てきたが、結局、そのプロジェクトに参加しているひとりひとりのメンバーが、自分にとってのプロジェクトの意味づけをしていないことに行き着くのではないかということになった(もちろん、その一人はプロジェクトリーダーである)。


◆知識労働者は意志決定のために自分の活動を意味づけする

昨年はドラッカーが見直された年だったが、ドラッカーの理論の大前提は、われわれの多くは知識労働者であるということだ。知識労働者とは、自らの(専門)知識を用いて判断をし、組織に貢献する労働者を指している。

誤解を生むかもしれないが、プロジェクトに参加するすべてのメンバーは、知識労働者であり、自らの知識を使ってなにがしかの判断をすることを求められている。もちろん、知識労働者が集まって仕事をする組織では、ガバナンスを維持するために一定の意志決定のルールを策定し、その権限をコントロールしている。プロジェクトマネジメントでいうと、上位組織の絡む変更管理の対象になっている意志決定がそうだ。


◆意志決定に関するパレートの法則

しかし、この割合はせいぜい、全体の2割程度である。残りの8割については、プロジェクトリーダーも含めたプロジェクトメンバーに委ねられている。ここでもパレートの法則があり、2割の意志決定の統制で、全体のガバナンスの維持ができるという説がある。逆に、これ以上の統制は望ましくないということだ。

組織が意志決定の権限を押さえている背景には、統制のために想定しているワークモデル(プロセス)がある。ところが、このワークモデルは過去にそのように仕事をしてきたことから出てきている想定に過ぎない。プロセスにしても、一見、決まっているようで、よくみればそんなにがちがちに決まっているわけではない。ところが、この比率を逆に考えているプロジェクトが少なくない。

コンサルのときに、よくこんなやりとりになることがある。

コンサル「これはなぜ、特に決まっているようには見えないが、どうしてこういうやり方をしているのですか」
クライアント「決まってはいませんが、これがうちのやり方です」
コンサル「変えると不都合がありますか」
クライアント「特にないと思います。組織が決定すればみんな従うと思います」

実は、これも「決められている」と認識していることが圧倒的に多い。先例を決まっているというのであれば、おそらく、上記の比率は逆になり、組織が決めているが8割で、せいぜい、プロジェクトに任されていることは2割もあればいいところだろう。


◆プロジェクトを捌く、こなすではつまらない。

プロジェクトがつまらないのは、これが原因である。普段、組織に対して不満を持っているにもかかわらず、自分が担当するプロジェクトによって、組織を変えてやろうという意識を持たずにプロジェクトをやっている。現場力の遠藤功先生は、「捌く」「こなす」という表現をされているが、プロジェクトマネジャーもメンバーも、プロジェクトを言われたままにこなしているだけ、忙しく捌いているだけなのだ。こなす障害があれば、エスカレーションし、ほとんど、意志決定をしていない。

意志決定をしないのではなく、できないのである。ここでできないというのは、「組織が権限を与えないからできない」というのではない。本当にできないと言っている。そして、できない理由が、プロジェクトに参加する意味づけを考えていないからだ



◆意志決定とレベル

プロジェクトの中の意志決定にはいくつかのレベルがある。以下では、レベルを分けて、意味づけしないと意志決定できないことを説明しよう。

一つは作業レベル。これは、品質や機能をよくするにはどうすればよいかといった技術的な意志決定などである。このレベルの意志決定は、プロジェクトに参加する意味づけができていなくてもできる。プロジェクトや組織で方針が決まっているからだ。ただし、この意志決定をしているだけだと捌いているだけになる。

次のレベルは、役割レベルの意志決定。例えば、設計方針の決定、技術の決定など。このレベルの意志決定をしようとすると、プロジェクトへ参加していることの意味づけが必要になってくる。例えば、ある技術の適用についての知見をつくり、組織知にするためにこのプロジェクトに参加するといったことだ。この意味づけと、組織の戦略や方針の解釈が意志決定の基準になる。

次のレベルは目的。例えば、顧客要求への対応、上位組織の要求への対応、部下の育成などに関する意志決定をしようとすると、自分がそのプロジェクトに参加している目的自体が問題になる。この意味づけをしていないと、特に上位組織への対応において、「いわれるままにする」しかなくなってくる。


◆80%を企てる

上位組織のいうことをきく必要がないと言っているわけではない。20%のルールに従うことはもちろんである。しかし、残り90%は自分の目的に応じて意志決定をしながら進めていけばよい。80%はこれまでその組織がやってきたやり方を変えることができるというわけだ。

この80%がそのプロジェクトによって、既存のやり方や組織の考えを変えるために使えるパワーである。ここをおもしろくアイデアをチームで出していけば、プロジェクトは自ずと面白くなっていくだろう。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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