第216回(2010.06.22)
見積もりの心理学と政治学

◆心理テスト

見積もりはつまるところ、どのように決まるのか。今回の戦略ノートはこの話。

簡単な例だが、5日間の作業を5つ、計25日でできると思っている仕事があるとする。各作業が計画通りにいく確率は一律に

6日の場合 100%
5日の場合 90%
4日の場合 70%

だとする。話がややこしくなるので、PERTのような生産性のばらつきは存在せず、確率は焦って失敗をする確率だとしよう。

簡単のために

(1)それぞれの作業を6日で終え、全体を30日で終える
(2)それぞれの作業を5日で終え、全体を25日で終える
(3)それぞれの作業を4日で終え、全体を20日で終える

の3つのどれを選ぶかという議論にする。このような状況で、あなたはどのような計画を立てるだろうか?


◆ある企業の結果

ある企業のコンサルでランダムに選んだプロジェクトマネジャー(PM)40名と、プロジェクトスポンサー(PS)20名にこのアンケートを採ったことがある。一人のPSに対して、2人の部下がPMになるように対象を選んだ。結果は、

(1)PM:12名、PS:3名
(2)PM:26名、PS:17名
(3)PM:2名、PS:0名

というものだった。(1)の3名のPSの6名の部下は全員(1)を選んだ。(2)のうち、12名のPSは部下が2名とも(1)だった。また、上下関係にあるプロジェクトマネジャーとスポンサーだった。

その後も何度か同様のアンケートを採ってみたが、だいたい、同じような傾向がでる。すべてを公開することはできないが、分析にした結果

・PMは余裕のある見積もりをする傾向がある
・PSは妥当な見積もりをする傾向がある
・PSの選択とPMの選択には相関がある

といった傾向がでてきた。

※以上は、すべて実際にやった調査のエッセンスを説明のためにモデル化したもので、実際の調査内容はもっと複雑である。

この結果は興味深い。具体的なデータは出せないが、PSの選択とPMの選択の相関は、支援が強くなればなるほど、強くなるといった結果も見えた。

リスク許容度と関係があるのかもしれないが、実はこの調査のきっかけになった問題意識は、見積もり基準があるにもかかわらず、見積もりのサバにばらつきがあるのではないかということだった。


◆見積もりの心理と政治

見積もりは、最低限の技術的要素であるにせよ、つまるところ、最終的にはプロジェクトマネジャーやプロジェクトスポンサーの心理的な側面、および、PSとPMの間の政治的な影響において決められるものだろうと思う。

もし、この企業のように、この仮説が当たっているとすれば、見積もりは標準化(管理)するものではなく、マネジメントするものであるといえる。

実際に、クライアントの中に、見積もりを部下にプレッシャーをかけたり、あるいは、組織を動かすための材料に使っていると公言するプロジェクトマネジャーが何名かいる。あるいは、顧客に影響を与えるための道具だと言う人もいる。

一方で、見積もりとはもっと科学的なものであり、正確さを要求されるものである。故に、生産性のばらつきなどへの配慮が必要だと考える人もいる。

例えば、技術見積もりと営業見積もりという2つの見積もり概念を使う企業もあるが、この問題は本質的には技術見積もりでも問われる話である。

この問題は、突き詰めれば、見積もりは技術なのか、意思決定なのかという問題でもある。あなたはどちら派だろうか?


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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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