第197回(2008.10.14)
プロジェティスタのプロジェクトマネジメント(5):
コンセプト創りを伴うプロジェクトのマネジメント

◆「何を作るか」とは「コンセプト」

前回は、「どう作るかを考えるプロジェクト」と「何を作るかを考えるプロジェクト」では、マネジメントの発想が違い、後者では、フロントローディングプロセスと、プロアクティブなマネジメントが必要であることを述べた。今回は、もう少し、マネジメントとして何が求められるかを考えてみたい。

まず、「何を作るかを考える」という意味を考えてみよう。たとえば、SIのプロジェクトで顧客要件を分析して、開発を進めるプロジェクトはどちらだろうか?これは、何を作るかを考えているわけではない。というと、反論したい人は多いだろが、何を作るかと、どう作るかの境目は「コンセプト」である。何を作るかを考えるというのはコンセプトを考えることであり、どう作るかを考えるというのはコンセプトの実現方法を考えることである。

では、必要なマネジメントはどう異なるのか?もっとも異なるのは、

・ステークホルダマネジメント
・チームマネジメント
・リスクマネジメント

の3つではないかと思われる。

なお、こういう議論をすると、一番、変わるのはスコープマネジメントだと考える人がいると思うが、少なくともPMBOK流のプロジェクトマネジメントでは、スコープマネジメントとしてすべきあまり変わらないと思われる。結果としては、スコープの決まり方に差がでるが、マネジメントとして異なるのはその周辺である。


◆ステークホルダマネジメント

どう作るかを考えればよいプロジェクトでは、ステークホルダマネジメントの目的は、ステークホルダをリスクにしないことである。作り方を考えるにおいては、ステークホルダからの要求はプロジェクトにとって制約になることが多い。たとえば、商品の細かな仕様に営業上の理由から注文を付けてみたり、リソースの供出を惜しむといった感じだ。このようなステークホルダの行動はプロジェクト側から見ればリスクに他ならない。そこで、ステークホルダの行動を、リスク要因としてみなし、コントロールしていくリスクマネジメントを行うのが一般的である。

これに対して、何を作るかを考えるプロジェクトでは、すべてのステークホルダは味方になる可能性がある。というよりも、ステークホルダを味方にしなくてはよいものはできない。別の言い方をすれば、ステークホルダを敵にした瞬間に、考える上での制約がひとつ増えることになる。したがって、ステークホルダを味方に変えていくような、ステークホルダマネジメントをしなくてはならない。


◆チームマネジメント

もっとも大きく異なるのは、チームマネジメントかもしれない。どう作ればよいかを考えるプロジェクトでは、各人の役割は決定的である。この技術を使うかもしれないので、この人は入れておこうという程度の不確実性はあるが、プロジェクトの配置されるメンバーは専門家としての役割を担うのが基本である。これらのメンバーが協調してプロジェクトワークに取り組めるようにするのがチームマネジメントの役割である。言い換えると、各人のパフォーマンスロスをできるだけ小さくするのがチームマネジメントの役割だといえる。

これに対して、何を作るかを考えるプロジェクトでは、役割は決めにくい。というよりも、少なくとも何を作るかが決まるまでは、チーム全員がコンセプトをまずは考えるという目標に一丸となって邁進する必要がある。このためには、どう作るかではマイナスでしかない、「対立」のような状況を作っていくこともチームマネジメントとして求められる。総じていえば、プロジェクトのビジョンを明確にして、チームワークを作っていき、チームとして一人ひとりの能力を超えたコミットメントができるようにしていくチームマネジメントが求められる。


◆リスクマネジメント

リスクマネジメントもまた、大きく違うマネジメントである。一言でいえば、ネガティブなリスクマネジメントではなく、ポジティブなリスクマネジメントが求められる。

ネガティブなリスクマネジメントとは、リスクを忌み嫌い、回避することを旨とするリスクマネジメントである。これに対して、ポジティブなリスクマネジメントは、どれだけリスクを取れるかを見極め、できるだけ大きくリスクを取るようなリスクマネジメントである。

現実的なマネジメントとしては、ネガティブなリスクマネジメントは、プロジェクト開示前にリスク識別をし、リスク対応策を作ったらほぼ終わってしまうが、ポジティブなリスクマネジメントは開始後に発生するリスクに細心の注意を払うと同時に、リスクの生起を注意深く観察(トラッキング)することによってリスクをコントロールしていく。


◆SIプロジェクトについて

最後に情報システムにおけるコンセプトとは何かという点について述べておく。誰に、どのようなサービスを、どのように提供するシステムであるかだ。つまり、RFP(Request For Proposal)に書かれている内容である。したがって、SIプロジェクトはRFPで提示されたコンセプトをどのように実現するかというプロジェクトである。したがって、現在の商慣習を前提に考えると、情報システム構築における何をつくるか考えるプロジェクトは、エンドユーザ側が行うプロジェクトがほとんどということになる。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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