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              第170回(2007.12.04) 
            スコープマネジメント「論」 | 
            
          
             ◆2つのスコープ 
 
            プロジェクトマネジメントを導入しようとする企業が最初に変化を感じることが多いのは、スコープという言葉の普及である。組織内の会議や議論で、スコープという言葉が普通の言葉として使われるようになることに変化を感じるマネジャーは多いようだ。 
 
            それが進歩であることは間違いないので、水を差すつもりはない。実際にそうだと思う。 
 
            ただ、ずっと気になっているのは、スコープという概念を完全に理解できているのは10社中で5社あるだろうかという点。そして、そのスコープに対する不十分な理解が、プロジェクトマネジメントの進化の障害になっているように思えることだ。 
 
            PMBOKでは、スコープはプロジェクトのスコープと成果物のスコープがあると説明されている。それぞれ、以下のようなもの。 
 
成果物スコープ:プロダクト、サービス、所産に特有の特性や機能 
 
            プロジェクト・スコープ:規定された特性や機能をもつプロダクト、サービス、所産等を生み出すために実行しなくてはならない作業。 
 
            と規定しており、9つの知識エリアの一つであるプロジェクトスコープマネジメントとは、成果物スコープではなく、プロジェクトスコープのマネジメントに関するガイドを示したものになっている。 
 
 
◆重要なのは成果物スコープではなく、プロジェクトスコープ 
 
            ところが、スコープという言葉を、成果物スコープの意味だけで使っている企業が多い。たとえば、スコープ変更計画というと、ほとんどの組織は目標成果物の変更手続きを計画している。 
 
            もちろん、プロジェクトスコープの「源流」は成果物スコープであるので、その意味で、成果物スコープをマネジメントするという発想は間違いとは言い切れない。 
 
            しかし、本来的な意味で、プロジェクトマネジメントがマネジメントすべきなのは成果物スコープではない。成果物スコープは本来、制約条件として上位組織から与えられるものであり、ここをマネジメントの対象にしようという発想は邪道だともいえる。 
 
            プロジェクトにおいてスコープが重要な理由は、スコープによってプロジェクトが「システム」として統合されているからに他ならない。スコープはへそのようなものだ。スコープとして成果物スコープだけを考えてもある時点でみればシステムとして統合されている。スタティックなシステムである。ところが、プロジェクトがスタティックなシステムである限り、プロジェクトチームが持つメンバーの能力を1%でも超えた目標を設定すると永久にそこにはたどり着かないことになる。もっと正確にいえば、1%分を金で買うしかないことになる。 
 
 
◆プロジェクトスコープのマネジメントによりダイナミックスが生まれる 
 
            しかし、現実には前回述べたようにプロジェクトというシステムの構成要素はダイナミックなのだ。プロジェクトマネジャーがリーダーシップを発揮する、ダイナミックなコミュニケーションが行われるなど、さまざまなダイナミックスがあり、それによってプロジェクトスコープそのものがダイナミックスを持つ。つまり、時間とともに変わる。チームの能力が上がる、やり方が変わる、などなど。このような変化を意図的に引き起こしていくのがスコープマネジメントの本質であり、プロジェクトマネジメントである。 
 
            スコープとして成果物スコープにのみ注目することは、マネジメントを放棄して、管理だけをしていることに他ならない。プロジェクトスコープがどのような意味を持っているかを一度、納得いくまで考えてみることをお勧めしたい。 
               
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              著者紹介 
              好川哲人、MBA、技術士           株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー 
              20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
               1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。 
               
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