第150回(2007.07.03)
顧客満足の達成に必要なもの
今回で戦略ノートも150回になります。100回が昨年の5月23日でしたが、このときに、戦略ノートはできるだけ毎週書こうと決心しました。まあまあの成績ですね。これからもこの調子で書いていきたいと思っていますので、ご愛読ください。


◆コミュニケーションの本質

さて、前回は顧客の声を聞く必要性について述べた。顧客の声を聞くに当たっては、まず、コミュニケーションに対する正しい理解が重要である。コミュニケーションとは

 ×情報共有
 ○相互理解

であるということをよく理解しておかなくてはならない。顧客と成果物の仕様についてコミュニケーションをするということは、要求を聞くだけでは十分ではない。表面的な要求仕様だけを「情報」として聞き出したのではコミュニケーションにならない。成果物の仕様には、顧客プロセスをはじめとするさまざまな背景、ポリシー、戦略などのさまざまな条件が付随しているが、これらをきちんと把握して、「なぜ、顧客がそのような要求をしているかを理解」してはじめてコミュニケーションができたことになる。


◆なぜ、コミュニケーションしないのか

なかなか、このようなコミュニケーションは行われない。ひとつの原因としてこのような認識でコミュニケーションをすること自体が難しいというのがある。これはヒューマンスキルの問題だ。しかし、コミュニケーションが何かとわかっていても、なかなか、やらない。なぜだろうか?

「顧客の声を真剣に聞くとキリがない」という意見をよく聞く。あるいは、「聞いても実現できるとは限らない」ということをいう人も多い。このような人は、プロジェクト成果物の仕様を決める、あるいはプロジェクトの仕様を決めるという仕事を「自分たちの今の能力でできること」の範囲に収まるように交渉する仕事かだと考えている人が多い。つまり、コミュニケーションの中ですでに範囲を限定して顧客の声を聞こうとするのだ。


◆覚悟を決める

ここに間違いがある。もちろん、「世界中で誰もやっていないようなことをやれ」とか「10日かかるものを1日でやれ」といった要求を真に受ける必要はない。しかし、仮に競合がやれることだとすれば、今の自分たちの能力ではできないとしてもやることを前提に顧客の声を聞いていく必要がある。つまり、ストレッチされた目標の設定をする必要があるのだ。実はここができていない人が多い。そのため、顧客の声に耳を防ぎたがる。

多分に、今できないこと、あるいは、やる方法が見えないことを引き受けるわけにはいかないという心理的な抵抗があるのだと思うが、顧客中心型プロジェクトマネジメントを実現するには、覚悟を決めて、ここを乗り越えなくてはならない。プロジェクトマネジメントにはこのためのツールが3つある。


◆顧客の声を実現する3つのツール

ひとつはチーム育成である。個々のメンバーの能力を上げ、また、チームとしてのパフォーマンスを向上することによって、今、できないことをできるようにしていく必要がある。PMBOKでいうところのチーム育成である。特に、技術的な困難さが伴う目標設定ではこの視点が重要である。

2つ目は品質マネジメントにおけるプロセス改善である。現状の作業プロセスを見直し、目標に応じてプロセスの工夫をし、目標達成をすることだ。特に、スケジュールの困難さなどが伴う目標設定などで有効な視点である。

3つ目はチーム育成、プロセス改善を前提に、ストレッチされたゴール(計画)でプロジェクトを進めていくことでリスクが発生する。そのリスクを管理していくためのリスクマネジメントである。

この3つの柱を立てることにより、顧客の声を十分に聞くことができる。

ただし、このようなプロジェクトマネジメントはプロジェクトマネジャーだけではできないことは普段経験されている通りだ。組織の理解が必要だ。

この話は次回にしたい。

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    1-1 「コンセプト力」とは
     1-2 コンセプチュアル思考によるコンセプト作成
   2.コンセプト力でプロジェクトを動かす
    2-1 コンセプト・目的・目標の設定
    2-2 要求の洞察
    2-3 計画の策定
    2-4 統合マネジメント  
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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