第103回(2006.06.13) 
学習する組織に変える(その6)〜知識を身につけるとは

◆はじめに

前回まで、プロジェクトマネジメントを学習する組織を支える基盤マネジメントとして

 ・理念を明確にする
 ・思考を促進するツール・手法を導入する
 ・組織インフラを刷新する

の3つについて説明した。この上で、組織の一人ひとりが学習をしていき、組織としての学習が成立する。次のステップとしてこの学習のメカニズムについて述べるが、その前に今回は少し、根源的な問題について考えておく。それは、「知識」についてである。


◆知識は行動の結果として生まれる

ITスキル標準などのスキル体系の中で、知識というのはキャリアのエントリーにおいて身につけるものだとしている。これは半分正しいが、半分誤解である。確かに、外部から得る知識というのはキャリアの初期で獲得することが望ましい。しかし、ここで早とちりしてはならないは、例えば、PMBOK(R)に書いてあることを覚え(あるいは理解し)、PMPの試験に合格したとしても、それは知識を身に付けたことにはならない。

先人の知識を情報として手に入れたに過ぎない。

基本的に知識というのは「行動の結果」として生まれるものである。これは誰も知らないような新しい知識については理論はないだろう。行動し、失敗や成功を繰り返しているうちに、こうすれば成功する、こんなやり方をすれば失敗するということがわかってくる。別の言葉でいえば98回で述べたようにパターン化され、言語化される。これが知識である。PMBOK(R)自体も生い立ちはそのようなものである。


◆既存知識の習得にも行動は不可欠

問題はこれからプロジェクトマネジメントに取り組んでいく人にとって、PMBOK(R)のような既知となっている知識の扱いである。情報としては理解し、手に入れることはそんなに難しくない。しかし、それをその人が知識とするには、行動を介する必要がある。

例えば、スコープの定義をするためにWBSという階層構造で書く。このことを知っただけでは知識を手に入れたとはいえない。単なる情報に過ぎない。実際にWBSを書いてみて、WBSを使って成果物を分解していけば、スコープを明確にすると同時に、スコープを実現するめのアクティビティを決めることができると「実感できた」ところで、始めて知識として身に付けたといえる。ここで注意してほしいのは、この実感は計画を作る作業だけでは生まれないことだ。計画を作ってみて、実際に計画を実施する。そしてその結果をレビューし、そこで始めて実感が生まれる。


◆学習するとは知識を生成することである

組織にとっても、個人にとっても学習するとは、このような意味での知識を生成することに他ならない。単に情報収集をしたり、議論をしたりするだけでは学習はできない。まずはこの点を心に留めておく必要がある。

以上の議論からお分かりいただけたと思うが、学習するためには、個々がコンピテンシー、つまり、情報(先人の知識、自分の生み出した知識)を活かす力を持つことが不可欠である。

言い換えると、個人がコンピテンシーを開発するとは、学習をすることに他ならない。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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