第11回(2002.12.12) 
プロジェクト組織の機能構成
 

プロジェクトの組織

◆機能組織と運用組織
 プロジェクトの運用組織にはいくつかの形態がある。これについては、「@エンタープライズプロジェクトマネジメント@事始 No.4」で解説したので、こちらを参考にして戴きたい


ここでは、個々のプロジェクトの機能的な組織構成について解説する。運用と機能の関係であるが、運用は機能組織のそれぞれのポジションを誰(どの部門)がこなすかという議論である。

◆プロジェクト組織の構成
 プロジェクトはチームであるが、同時に組織でもある。特にプロジェクトの規模が大きくなってきたり、エンタープライズプロジェクトマネジメントを指向すると組織的な重要性が高まってくる。ここでは、プロジェクトチームの機能構成について説明する。プロジェクトチームの機能構成は、すべてのプロジェクトに共通ではあるとは考えにくいので、ここでは、プロジェクトの規模に注目し、大規模、中規模、小規模のプロジェクトに分けて考える。また、説明の中でも触れるが、機能構成と物理的な構成は別物である。たとえば、異なる機能を1人で担当することもあるし、逆にひとつの機能を複数の人間で担当することもありうる。この点を念頭において読んでいただきたい。

◆プロジェクトの規模と機能的組織
 経営に大きな影響を与える大規模なプロジェクトではプロジェクト組織は図のようなものが多い。



 図から分かるように、プロジェクトは
 (1)プロジェクトオーナー
 (2)プロジェクトマネージャー
 (3)プロジェクトリーダー
 (4)プロジェクトマネジメントオフィス
 (5)ワーキンググループ
 (6)ステアリングコミッティ
 (7)コンサルタント
から構成される。大規模なプロジェクトの特徴は、2つある。ひとつはプロジェクトの性格にも拠るが、ステアリングコミッティを作るケースが多いことである。また、もうひとつの特徴は、プロジェクトリーダーを複数おくことである。また、プロジェクトマネージャーは、1人であるとは限らず、プロジェクトマネジメントチームとするプロジェクトも少なくない。
 中規模なプロジェクトであれば、ステアリングコミッティをおくことは少ないであろう。また、プロジェクトリーダーを複数立てるケースも珍しい。一般には、1人のプロジェクトマネージャーと1人のプロジェクトリーダーが、後に述べるような役割分担をすることが多い。この場合、1人の人がプロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの役割を果たすことも少なくない。
 小規模なプロジェクトになると、プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーを明確に区別することはまずない。本当の小規模になると、ワーキングメンバーとプロジェクトマネージャーをかねることさえある。また、プロジェクトマネジメント作業も少なく、プロジェクトマネジメントオフィスを置くことも少ない。

◆プロジェクト機能組織の構成機能の役割
 以下では、プロジェクトの構成機能の一般的な役割を説明する。

(1)プロジェクトマネージャー
 プロジェクトの全責任者である。最大の役割は、プロジェクトの中のさまざまな問題に対して経営的視点からの判断を下すことである。その点で大きな役割は2つあって、一つはプロジェクトの立ち上げを行うこと、もうひとつはプロジェクトオーナーを始めとするステークフォルダとの契約面でのネゴシエーションを行うことであろう。プロジェクトマネジメントの作業の実質的な運用者はプロジェクトリーダーであってプロジェクトマネージャーが行うケースは少ない。
 プロジェクトの位置づけによって異なるが、全社プロジェクトのような場合には、通常、役員クラスの人材がプロジェクトマネージャーになるケースが多い。

(2)プロジェクトリーダー
 プロジェクトリーダーがプロジェクトの実質的な推進責任者となる。経営におけるリーダーシップが難しいように、はやり、プロジェクトにおけるリーダーシップは難しい。プロジェクトリーダーはメンバーの一員であると同時に、他のメンバーの能力をうまく引き出す必要がある。メンバーの自主性に任せるようなリーダーシップをとることもできれば、ルールを作って規則重視で進めていくような方法も取ることができる。この方法が絶対であるという基準はなく、要はどのやり方がメンバーの持つ潜在的能力を最大限に引き出し、プロジェクトのモラルを高め、モチベーションを向上させるかという問題である。プロジェクトリーダーの考え方一つでプロジェクトのパフォーマンスが決定されるといっても過言ではない重要な役割である。
 と、同時に形式的な管理者である必要もある。QCDの管理を行う同時に、計画変更をうまく実施していかなくてはならない役割でもある。

(3)ワーキングチーム
 ワーキングチームの構成の仕方はさまざまであるが、たとえば、OBSだと、成果物に対して、あるいは同種の複数のワークパッケージに対して作られることになる。前者は例えば、自動車を開発するときにエンジンとボディに対してワーキングチームを設置するという考え方である。後者はソフトウエアの開発などでよく見られる方法で、システム設計ワーキングチーム、プログラム設計ワーキングチーム、コーディングワーキングチーム、テストワーキングチームというように、作業の種類に応じて分けるケースである。どのような考え方でワーキングチームを作ればよいかは一概には言えない。プロジェクトの規模によっても変わってくるし、そのプロジェクトチームの母体になるライン組織の事情によっても変わってくるだろう。
 また、大規模プロジェクトの場合、プロジェクトの下にサブプロジェクトをおくケースがある。この場合、サブプロジェクトの下にワーキングチームが構成される。

(4)プロジェクトマネジメントオフィス
 プロジェクトオフィスはプロジェクトで発生する事務作業を分担し、プロジェクトメンバーにはプロジェクト作業に集中してもらうことを目的にした組織である。プロジェクトでは契約やミーティング、進捗管理などですざましい量のペーパーワークや、スケジュール調整作業などが発生することがある。ミーティングの開催の調整、資料の準備、議事録の作成などである。
 短期プロジェクトでは、ミーティングの重要性は大きく、ミーティングについては事務作業を軽減して集中することがプロジェクトのパフォーマンスに直結する。そこで、これらの作業はプロジェクトマネジメントオフィスで行い、プロジェクトメンバーは本来の作業に集中して貰うという体制をとることが望ましい。
 さらには商品開発のプロジェクト、経営革新のプロジェクトなどではデータ収集としての調査をプロジェクトオフィスが行うケースも多い。
 ただし、最近のプロジェクトマネジメントオフィスの機能は、単にプロジェクト事務のサポートだけではなく、エンタープライズプロジェクトマネジメントの中で、戦略部門のような位置づけになっている場合も少なくない。このようなプロジェクトマネジメントオフィスは、個別プロジェクトから見るとその外側に位置するものであるが、そのような場合は、ここでの説明はプロジェクトマネジメントオフィスの支援業務の部分だと考えて欲しい。

(5)プロジェクトオーナー
 プロジェクトオーナーはプロジェクトの発注者である。フェーズマネジメントの方法にもよるが、プロジェクトの中でオーナーの作業というのが意外に多いものである。発注したらもう後は任せておくとはなかなかならない。
 そこで、プロジェクトを行う際にはオーナーも体制の中に組み込み、プロジェクトマネジメントの管理下におくことが望ましい。実際のところ、例えばシステム開発を例にとれば、納期遅延の原因の一つにオーナーの作業遅延が上げられることが多い。指定の日までに仕様を決めなかったといった類の話である。責任の明確化のためにも体制の中に入れるべきである。

(6)ステアリングコミッティ
 プロジェクトの重要性が高い場合には、オーナーとプロジェクト実施企業の間にステアリングコミッティーをおくことがある。そのようなプロジェクトのプロジェクトマネージャーは間違いなく役員であるが、ステアリングコミッティはオーナー側の役員を加えたプロジェクトの運営委員会である。

(7)コンサルタント
 プロジェクトの中でコンサルタントはさまざまな役割を果たすが、最も多いのが問題解決者の役割であろう。その意味でプロジェクトリーダーの下に入れているが、実際にはもっと上位側の組織で、ステアリングコミッティーに入ったり、あるいはプロジェクトマネージャーに付いたりすることも多い。

参考文献:
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