第15回(2003.04.21) 
プレシデンス・ダイアグラム・メソッド(PDM)
 

◆ワークパッケージ
 WBSをベースに計画を作るときには、まず、最初にWBSで作業単位を決める。これはワークパッケージと呼ばれる。

 ワークパッケージの場合、だいたい、1ヶ月程度の作業に分割するのが適当であるといわれているが、このサイズをスケジュールの単位にするには、計画そのものの精度に問題が生じるし、また、マネジメント上も進捗状況の把握が難しくなるだろう。

 そこで、ワークパッケージをさらに細かく分解し、アクティビティという単位に分ける。ワークパッケージの1ヶ月に対して、アクティビティは1週間くらいだと考えておけばよい。

 このようにしてワークパッケージをさらにアクティビティに分解し、それに対して作業工数を見積もるが、次に、アクティビティ間の順序を考える。ここでは、PDM(Precedence Diagramming Method)というツールが使われることが多い。

◆アクティビティの順序関係
 PDMは、アクティビティの順序関係を、論理的に定義していく手法である。ここで、アクティビティの順序関係であるが、4つの順序関係がある。
(1)FS(Finish-Start)
 先行作業が終了すると、次の作業が開始できる。例えば、設計が終われば製造を行うといったもの
(2)FF(Finish-Finish)
 先行作業の終了と同時に後続作業も終了。例えば、機器のレンタル(先行作業)の終了と同時に、その機器を使ったテスト(後続作業)も終了するようなケース。
(3)SS(Start-Start)
 先行作業の開始と同時に次の作業も開始。ただし、後続作業を先行させることはできない。例えば、システム設計を開始すれば機器の発注はできるが、設計作業の前に機器の発注はしない。
(4)SF(Start-Finish)
 先行作業の開始が後続作業の終了になる。例えば、システムテスト(先行作業)の開始が、テスト準備作業(後続作業)の終了になる。

 さらに、これらの4つの順序関係に加えて、先行作業と後続作業の間に「ラグ」を定義する。例えば、FSの順序関係の作業として、空き地にコンクリートを敷いて、そこに線を描いて駐車場を作るとする。このときに、コンクリートを敷いた後で乾くまで待ってその後に線を引く。これを先行作業(コンクリートを敷く)と後続作業(線を引く)とその間のラグ(待つ)で順序関係を表現する。

 アクティビティの順序関係をこれらの4つの関係とラグで表現することによってアクティビティ間の順序を決めるのが、PDMである。

◆順序の決め方
 順序を決める際に重要なタスクは、同じ先行アクティビティを持つアクティビティである(逆にいえば、複数の後続アクティビティを持つアクティビティ)。まず、そのようなアクティビティに注目する。そして、すべてのアクティビティの順序関係を決めればよい。ただし、このときに、アクティビティの間に依存関係が存在することがあるので注意しなくてはならない。
 アクティビティの間の依存関係は2つに区別できる。強制依存関係、任意依存関係の2つである。
 強制依存関係は、作業の順序によってきまる依存関係である。これはどのような事情があろうとも、その順序で行わなければならないような関係である。例えば、ソフトウエアの設計をして、プログラミングを行うというのは強制依存関係である。
 これに対して、任意依存関係というのは、プロジェクト側の事情で決定できるものである。例えば、テストデータの作成とプログラミングはプロジェクトの中の事情を考えて決めることができる。これは任意依存関係である。
 このような依存関係を考慮しながら、PDMを作って、アクティビティの順序を決めていくことになる。

(注)PMBOKでは、これ以外に外部依存関係という依存関係を設定しているので、PMPの受験をされる方は注意してください)
参考文献:
プロジェクトマネジメントの基本手法の勉強には,
 伊藤健太郎:成功するプロジェクトマネジメント,中央経済社(2002)
がお奨めです.
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