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プロジェクトマネジメント戦略ノートト #7 進捗報告について考える
オペレーションズ・クリエイター 好川哲人
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 プロジェクトマネジメントの企画フェーズでは経営学の手法(例えば,ポートフォリオ,需要予測など)が用いられ,計画フェーズではORの手法(PERT,数理計画,パラメトリック見積もり手法など)が用いられている.ところが,プロジェクトが始まってしまうと,その管理に使う手法はないということが言われて続けてきて,ここに,アーンドバリューマネジメントという手法が登場してきた.アーンドバリューを使うことによって進捗報告は画期的に変わるといわれるが,今回は,進捗報告とは何かということについて考えてみた.
 進捗報告とは何か?よく言われるのは,プロジェクトのメンバーのそれぞれが自分の担当している作業が「どこまで進んだか」を報告し,プロジェクトマネージャーを始めとするプロジェクトメンバー全員でプロジェクトの進捗度合いを共有することにある.まず,ここに大きな落とし穴がある.進捗報告というのは本当に「どこまで進んだか」に関する報告だろうか?答えはNoである.進捗報告は計画に対して,取り組みがどうなっているかを報告することである.なんだ,同じことじゃないかと思われる方もいらっしゃると思うが,実は雲泥の差がある.皆さんがプロジェクトマネージャーの立場で想像してもらえば直ぐに分かるが,欲しい情報はどれだけ進んだかという情報ではない.いつ終わるか,終わったときのコスト実績はどうなりそうかという情報が欲しいのである.これでもまだ,計画をみれば分かるから同じことじゃないかと思われる人がいるかもしれない.
 問題は計画が変わるかもしれないということにある.例えば,Aという作業を5日間で行う予定であるが,予定通りに終われそうにないとしよう.とりあえず,4日間終わったところで作業は半分しか終わっていないとする.このとき,考えなくてはならないことはAという作業をどうやって早く終わらせるかではない(もちろん,これも大切だが).Aという作業の次にくる作業Bをどういうスケジュールで行うかである.つまり,Bのスケジュールを変更しなくてはならないのだ.
 もちろん,ここではさまざまな判断が考えられる.もっとも普通に考えれば,Aが何日遅れるかと推測し,その分だけBも遅らせるという判断であろう.もし,Bという作業は専門家しかできない作業で,その専門化が当初予定した期間しか確保できないとすれば,Bのスケジュールはそのままで行うしかないので,Aを予定通りに終わらせる必要があるという判断をするだろう.つまり,残りの1日に集中的に要員を投入して終わらせる.このほかの判断もあるかもしれない.
 いずれにしても,まず,Aが今後どういう見通しであるか,言い換えるとAという作業の新しい計画が必要なのである.そのためには,もし,トラブルが発生してAという作業が遅れているのであれば,そのトラブルをどのように解消し,トラブル解消の時間も含めて最終的にいつ作業が終わるのかという報告をしてもらわなくてはならない.これが進捗報告である.プラント型のプロジェクトはともかく,マネジメント型のプロジェクトでは特にこのこのような進捗報告が求められる.
 また,そのように考えるとQCDのすべてて計画と相違なく進んでいる場合,わざわざ進捗報告をする必要はないとも考えられる.話が飛ぶが,中央線に「中央ライナー」という通勤用の全社指定席の特急列車が走っている.この列車の指定席のチェックシステムは面白い.車掌が指定席の発売リストを持って列車を見て廻り,発売されていない席に座っている人がいれば声をかける.それ以外はノーチェックである.理屈の上ではこの方法だといくつかの不正乗車のリスクが残るが,実質的にはほとんど杞憂であろう.これを見て,JRも民間企業になったなあと思った.話を戻すが,プロジェクトマネジメントにも当然作業負荷はあるわけで,あまり意味のないマネジメントは排除し,その効率化を考えることは重要なことであろう.計画通りに進んでいるときの進捗チェックはその一つであろう.そのときに判断が難しいのは,個々のメンバーの自立性をどれだけ認めるかであろう.要は予定通り進んでいるという判断を各メンバーにさせて言いかどうかなのである.少なく現状のやり方は,計画通りかどうかという判断は個人にはさせないケースが多いように思える.これは計画の表現の方法の問題でもあるが,これについては,また,別の機会に意見を述べたい.
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後記
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