第14回(2003.11.24) 
多様性に敬意をはらう!
 
ダイバーシティをリスペクトしてますか?

 「ダイバーシティ」という言葉がある。カーナビなどにつけるダイバーシティアンテナの「ダイバーシティ」である。日本語では、「多様性」と訳す。ダイバーシティアンテナはとても単純である。複数のアンテナを準備しておいて、感度のよいアンテナの信号を使う。

 最近、あまり目立たないところにダイバーシティーアンテナが使われている。ノートパソコンの無線LAN用のアンテナだ。これは実に興味深い技術だ。ノートパソコンのモニターに複数埋め込んであるのが普通だが、モニターのサイズはせいぜい30cmである。30cmしか違わないのに、非常に効果的なのだ。30cmしか離れていないのに、受信状態が異なるのだ。これは極めて示唆的だ。

 さて前置きが長くなったが、プロジェクトマネージャーの資質とは何かと聞かれると、著者は必ず、ダイバーシティをリスペクト(尊敬)できることと答えることにしている。

 このメルマガでも、マネジメントと管理の違いという議論をしたことがあるが、実はこの議論はそんなに深遠な議論ではない。ダイバーシティを尊敬するのがマネジメントであり、殺ぐのが管理だ。明確な話だ。

 本来、プロジェクトチームは、多様なタレントの集合である。このよう述べると「それは違う」と即座に否定する人もいるだろう。現実に確かに違うプロジェクトもたくさんある。それは、プロジェクトをマネジメントできない人たちが、従来の自分たちの知っている方法で管理しているからだ。もちろん、それがプロジェクトの度に繰り返されると、本人の持っているダイバーシティそのものが殺がれてしまうことになる。

 これが如何にリスキーなことかは、アンテナの例を考えればよく分かる。複眼的思考という考え方があるが、複眼をみすみす、単眼にしているのだ。一歩先は闇というプロジェクトの中で、なんとナンセンスなことだろう。

 米国ではプロジェクトマネジメントがうまく行くのに、日本ではうまく行かないのは、ここに一因があるのは間違いない。

 英語でいうダイバーシティは民族的な意味が大きいが、プロジェクトでは異なる価値観を認められるかどうかがポイントの一つである。もっと正確にいえば、異なる価値観を統合して一つの価値観やカルチャーを作れるかどうかがプロジェクトマネージャーの腕である。

 ダイバーシティを否定している例はよく見かける。

 例その1。技術選択。傍からみていると、どうみても、好き嫌いのレベルの選択なのに、議論した挙句、プロジェクトマネージャーの意見が自分の意見を通す。

 例その2。技術的な視点から仕様を決めようというメンバーの中に、お客さんの意見を徹底的に聞いて仕様を決めようというメンバーが出てきた。お客さんの意見を聞くことがいいかどうかを議論をするでもなく、いつものやり方に従って、技術的視点から仕様を決めた。

 これらは、すべてダイバーシティの否定だ。

 どうしてダイバーシティが欠如するのか?管理とプロジェクト業務が本末転倒しているのだ。「管理しやすい」ためにはどうすればよいかという発想でものを考える。もちろん、「管理をしていればプロジェクトはうまく行く」と信じてやっているわけだが、、、

 しかし、プロジェクトマネジメントの目的は、プロジェクトを管理することではなく、プロジェクトの目的を達成することだ。プロジェクトが大規模化、複雑化すればするほど、両者の距離は大きくなってくる。

 その意味で、ダイバーシティがよいか悪いかではなく、そのプロジェクトにとって必要かどうかという視点で考えると、きっと異なる答えがでてくるだろう。

 みなみに、著者が今、この原稿を書いている「スターバックス」コーヒーのミッションステートメントに以下の2つのステートメントが含まれることは有名な話だ。

 Provide a great work environment and treat each with "respect" and dignity

 Embrace diversity as an essential component in the way we do business
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読者からのコメント
スターバックスのembrance は、embrace が正しいようです。 yuusan(54歳・経営管理)
ご指摘ありがとうございます。修正しました。 好川哲人

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