第12回(2003.11.13) 
PMコンピテンシって?!
 

◆PMコンピテンシーへの関心の高まり
 この半年くらいの間に、急にPMコンピテンシーが注目されるようになってきた。事の始まりは、この連載でも何度か触れたことがあるPMIの2002年の年次大会で報告された、60%以上のプロジェクトは、ヒューマンソフトスキルの欠落で失敗しているという例の報告である。
 もちろん、このような報告がされた背景には、PMIがPMBOKをベースにしたPMコンピテンシーであるPMCD(Project Management Competency Development framework)を出版し、プロモーションの意図があったとしても、多くの人の琴線に触れる報告だったことは間違いない。

◆そもそもコンピテンシーとは何か?
 PMコンピテンシーのセミナーをやると必ず出てくる質問の一つに、「コンピテンシーって日本語に訳すとなんですか?」という質問がある。competencyというのは、組織論で使われる competence という言葉と同義である。competence は日本語に訳すと、能力という意味だ。適性といったニュアンスもある。

 問題は「能力」という言葉だ。日本語で「彼は、プロジェクトマネジメントの能力がある」というと、本来はプロジェクトをマネジメントを「人並み」にできるという意味であるが、ニュアンスとしては「人並み以上」にできるというニュアンスで取られることが多い。コンピテンシーというのは、本来の意味で「能力」を指している、つまり、人並みにできるかどうかの指標なのだ。まず、これを頭に入れておいてほしい。

 もう一つ大切なことは、「コンピテンシーを持つ」とは、能力を持っている状態を指しているわけではなく、「能力を使って行動できる」ことを指している点だ。

 あなたの周囲に「あの人は能力があるのに、もう一つ結果がでない」という人はいないだろうか?そういう人たちを注意深く観察していると、いわゆる耳学問はあるが動かない人(いわゆる評論家)と、動くけど成果がでない人の2タイプに分けることができる。このような人はいずれもコンピテンシーを持たない。

 「術(すべ)を知っている」という言葉があるが、コンピテンシーを持っている状態を一言で言うと、「成果を出す術を知っている」といえる。

◆PMの特殊性〜営業マンと較べて

 組織論やHRMの中でコンピテンシーというと真っ先に出てくるのが営業マンである。営業が必要とするのは、行動ノウハウ(知識)と行動力である。先輩やセミナー、書物などでノウハウを知る。そこに、コンピテンシーがあれば、そのノウハウを行動に移せ、成果に結びつけることができる。

 ところが、営業マンとPMは大きく異なる点がある。営業には理論はないが、PMには理論がある。もちろん、ノウハウもある。

 つまり、PMには、理論や知識があり、理論を適用する知識(メタ知識)と、プロジェクトマネジメントの行動ノウハウ(知識)の両方が存在し、そして、それらのノウハウを実際の行動に結びつける行動力が求められる。

 このように少し、構図が違う。

 (以下、11月20日号に続く)
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読者からのコメント
近頃はやりの「コーチング」との兼ね合いをどう考えられているか知りたいと思います。 うめばち
コーチングはPMコンピテンシーを身につけさせる(個人コンピテンシーを変革し、行動をさせる)ための有効な手段だと思っています。ただし、PMコンピテンシーと一般的なコンピテンシーの間には知識への依存度の差がありますので、コーチングだけでなんとかなるとは思えません。 好川哲人

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